第18話
「じゃ、罰ゲームね」
「ま、負けたのは彼だけど、とりあえず連帯責任、という意味で」
「は?」
「じゃあ、あなたたち、後ろ向いて」
私たちはその言葉には逆らえませんでした。
そのまま体をくるっと回すと、後ろを向きました。
「キャー! お尻、かわいー!」
「男のケツ、きったねー!」
生徒たちの声が響きます。
「じゃあ、そのまま手を壁について」
「え?」
「いいから、早くやるんだよ!」
私たちは、しかたなく、壁に手をつきます。
「壁から手を離したら、殺すよ?」
ヤクザの女性の声が響きます。
私たちは、それこそお尻を突き出すようなポーズになりました。
その瞬間、また歓声が響きます。
「うっわー! やっらしー!」
「でしょう? こういうのをね、おねだりポーズっていうのよ?」
「じゃ、見て?」
すると女性が、彼のお尻に手を掛け左右に開きました。
「ほーら。男のお尻って、こうなってるのよ」
「やー! なんかプランプランしてるー!」
「きったねー!」
「ほら、みんな写真にとっておいてねー!」
「はーい!」
携帯カメラのシャッター音が、サウナの中に響きます。
彼はひたすら耐えています。
そして私の視線に気がつくと、絞り出すようにこう言いました。
「見ないで…。見ないでくれ…」
その瞬間、またヤクザの女性が笑います。
「何言ってるの?」
「誰が、勝手にしゃべっていいって言った?」
彼がビクッとふるえます。
「ほーら、みんな見てー?」
女性は彼のお尻から手を差し入れ、手のひらで彼の袋を触りました。
「これが、男の急所。こういう風にお尻を出すと、無防備に弱点がさらけ出され
ちゃうわけ。かわいいでしょ?」
「かわいー!」
「だからみんな、写真に撮っておかないと!」
「はーい!」
その瞬間、私の前でオタマを持っていたリナと呼ばれる女性が、近づいてきて、
言いました。
「あの、こいつなんか今、私の方、にらんできたんですけど」
「え? 本当に?」
「そ、そんなこと、してない!」
彼はあわてて言います。
「してない?」
「し、してません!」
しかし彼女は言いました。
「見たよ。それで、すごいムカついたんだけど」
「あら…。じゃあ、どうするの?」
女性の言葉に、リナは言いました。
「犬にしていいっすか?」
「ふふ。任せるわ」
「ほら、聞いた? 犬だよ。犬! 犬のポーズしなよ」
「え…?」
彼はとまどいます。
「意味わかんないのー? 足あげるんだよ! 犬がオシッコするみたいに!」
「キャーーー!」
女性たちの期待にまみれた声が響きます。
彼は動きません。
「いいよ? やらなくても。そのかわり、全員でタマ蹴るけど。潰れるまで」
「そ、そんな…」
すると彼は意を決したかのように、足をおずおずと上げました。
足は私と逆の方。私には、彼の開いた部分は見えません。
彼の手は壁に突き出して、上半身は90度に曲がっています。
そのうち片足だけを上げるのは、かなりバランス的にもきついはず。
そして何よりの屈辱のはずです。
「きゃああああああ!」
「すっごーい!」
「犬のオシッコーポーズー! うちのクロと同じ!」
「うはっ! 丸見え!」
「恥ずかしくないのーー!?」
さらに少女たちの声が響きます。
「ほらほら。もっと上にあげなよ!」
「腰の位置よりあげないと殺すよ?」
彼は必死に足を持ち上げます。
その瞬間です。
「ギャーーーーーーーーーーー!」
「うわーーーーーーーーーーーー!」
そんな声が、少女たちから響きました。
なに?
私はビックリして、そのままのポーズで彼の方を見ます。
少女たちは、彼の股間を指さして、大声を出しています。
私には、何なのかよく見えません。
「じゃ、今度は逆の足ね…?」
リナはニヤリと笑って言います。
それは私の方向の足。すなわちこちらに見せつける方向になるはず。
彼自身、それはさらに大きな屈辱のはずです。
「ほら! 早く!」
その言葉に彼は、涙を流しながら従います。
「見ないで…。見ないでくれ…」
彼は大きく足を上げ、私の方向に持ち上げます。
その瞬間、私は気がつきました。
彼のアレは、勃起していました。
「あはははは! ちんぽでっかくなってるー!」
「すっげー! 私はじめて見ちゃったー!」
「彼女にも見られて、こいつ最悪じゃねー!?」
少女たちの声が響きます。
「ってか何!? 何でボッキしてるの!?」
するとヤクザの女性が言いました。
「そうね。たぶん、犬のオシッコスタイルでおっぴろげになったところを中学生の女
の子に見られて、興奮しちゃったんじゃない?」
「げーーーーー! 変態!」
「最低じゃん!」
私はそのことが信じられませんでした。
「ほら、みんな見てー!」
ヤクザの女性は、ながほそい棒を持って、彼のアレを弾きます。
「うぐっ!」
「これがね、勃起したオチンチンよ」
「よく見ておいてね?」
「まぁ、こいつのは勃起しても小さいけど」
「ほらほら。かぶってた皮をバンドエードで止めてるけど、それがパンパンに引っ
張られてない?」
「すっげー!」
「でも最悪ーー!」
少女たちは口々に罵声を浴びせかけます。
すると女性は、リナに言いました。
「じゃ、リナちゃん。どうしよっか?」
そして彼女は私の方を指し示しました。
リナはニヤっと笑うと、もう一人の少女と共に、私に言います。
「あのー!」
「は?」
「なんか、あんたんとこの彼氏が、きったねーもの大きくして、すっげー気分害
したんですけどー」
「そうそう!」
「どうなんですか? 彼女として」
「そ、そんなこと…言われても…」
「これ、どう落とし前つけてくれんの?」
「そ、そんな…」
「お姉さんも、同じポーズ、してくださいよー」
「そうだー! そうだー!」
みんなから大きな声が響きます。
そんな。
私はためらいます。
「ってか性教育教材なんですよね? まさか断らないですよね?」
「………」
私はしかたなく、足を上げようとしました。
「待った!」
「は?」
「もちろん、彼と同じ方向の足ね」
もう、逆らえません。
私は彼と鏡のように対称なポーズをします。
「ほら、それで彼と同じ? もっと高いよね。彼の足」
「…いや、いやあああああ………!」
「早く、しなよ?」
私は足を大きく上げました。
「うっわーーーーーーーー!」
「すっごーーーい!」
「ピンクー!」
「中まで、丸見えじゃーん!」
少女たちがまた叫び声を上げます。
「ほーーら、みんなーー?」
「これが男と女の、同時の大股開きよー!」
「マンちゃんとチンちゃんのご対面!」
「オスとメスのワンちゃんね!」
「こんなところ、たぶん一生で他に見る機会ないからね! ちゃんと写真に撮っ
ておかないと!」
「はーい!」
「やだあ………! やだあああああ…!」
私は、壁に顔を寄せたまま、泣きました。
「あれっ!? こいつの、また大きくなってないですか?」
「あ、ホントだーー!」
その言葉に私は彼のを見ます。確かに大きくなっているようでした。
「まぁ♪ 彼女のが、男の子や女の子たちの前で晒されてるのに、それを見てさ
らに大きくしてるのね!」
「ひっどーーーい! 最低ーーー!」
その言葉に彼は顔を背け、また涙を流しました。
そのときです。
女性の声が、私の心に突き刺さりました。
「じゃ、そろそろオシッコしてもらいましょうか。ワンちゃんらしく」
(つづく)
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