第21話
仰向けにされた瞳はあわてて胸を隠したが、オジサンはそれにはかまわず、彼女のおへその下の方に手を置いて、いくつかのツボを手早く押した。
「ふぁ・・・ん」
いったん落ち着いた瞳はその都度小さな吐息を漏らしていたが、最後に太い指先が陰毛の中に分け入って力を込めると、とたんに大きくビクリと反りあがった。
「ヒッ・・・!」
(!)
絵美はその様子を恐ろしげに横目で見ていた。
(あれは何なのかしら・・・?!)
あっさりとヘアーをまさぐられたのもショックだったが、その下の部分を指が押したときの、意識がどこか深いところへ堕ちていくような感覚。
「ん・・・」
オジサンが絵美の細い両脚を撫で上げてきた。
(こんなに・・・敏感に・・・なったのもそれからだ)
感じやすくなった、と考えそうになって絵美はあわてて違う言葉を探した。
隣のオジサンは瞳の反応に満足そうな表情を浮かべると、彼女の裸の身体に手を回すようにしてうつぶせにした。
「はぁ・・・」
瞳は再びなされるがままに枕に顔を乗せ、両腕で枕を抱えるようにしてそれを隠した。
(まだ続けるわけね?)
絵美は瞳を気遣いつつ、松山のほうへと視線を走らせた。
「ほぉ」
松山は今は瞳のほうに興味津々という感じで、彼女の背中とおしりのつくる曲線をしげしげと眺めている。
(まったく、何考えてるのよ・・・)
その松山につられるように、すべてのギャラリーが瞳たちに視線を集中させる中で、オジサンは信じられない行動に出た。
「ふん」
「へっ?」
(えっ!!!)
松山をのぞく全員が目を疑った。
オジサンは白衣のボタンをちぎらんばかりに急いではずすと、あっという間にそれを脱ぎ捨てて上半身裸になったのだ。
(何!?何???)
毛むくじゃらの腕から続く毛が、肩から胸までびっしりと生えている。
(何で脱ぐ必要があるわけっ?)
「?」
オジサンは自分の肉体に見とれているかのような絵美に気づくと、ニヤリと笑って胸の筋肉に力を込めた。
(ちがう!)
絵美は変な誤解をされるのをおそれて視線をはずした。
「ははは」
人を見下したような笑い声を上げる松山を、絵美はキッとにらみつけた。
「ふふん」
(何するつもりなの?このオジサンは?)
唯一この場を理解している松山の余裕の表情が絵美をいらだたせる。
「えっ?えっ?」
瞳が不穏な空気に気が付いて不安そうに顔を左右に振った。
だが、そのときにはすでに彼女には逃げる場所がなくなっていた。
「オーケイ」
上半身裸になったオジサンは、毛むくじゃらの胸に汗をしたたらせながら、瞳の背中にゆっくりと指先を伸ばしていく・・・
ツー・・・
「ハァッ・・・う・・・」
白い背中に浮いた肩胛骨に沿って曲線を描くように十本の指先が移動すると、状況がわからないままの瞳の唇から甘い声が漏れた。
(瞳ちゃん?どうしたの???)
絵美は瞳の過敏すぎる反応に少なからず驚いた。
「ヒッ!・・・・ん・・・ん・・・んんっ・・・!」
オジサンはそのまま瞳の裸体の表面を優しく撫でるように身体の横へと両手を動かすと、身体の下でつぶれている大きな胸を僅かにかすめ、肋骨の間にそれぞれの指を這わせるようにしながら、瞳の肌を愛撫した。
ゾワァァァァ・・・・
明らかな快感に一番驚いていたのは瞳自身だった。
ある男に「感じやすいな、おまえ」と言われて恥ずかしい思いをしたことはあったが、背中をちょっと撫でられただけでこれほど感じるほど淫乱ではないはずだ・・・
「アァッ!・・・くっ・・・ん・・・」
恥じらう乙女の思いとは裏腹に、脇腹から背筋をくすぐるように動く毛深い触手が瞳の快楽をさらに加速する。
(何?どうしたの!?)
絵美にも、ほかの誰の目にも、瞳の反応がふつうでないことは明らかだった。
とぎれがちな呼吸に混ざって漏れてくるあえぎ声とともに、丸いお尻ごと腰がピクッピクッと上下にときおり動く。
「ンンンッ!!!」
スラリとした足先は快楽を逃す場所を探すように指先までピーンと伸ばされて緊張している。
まるで全身が性感帯になったかのように、オジサンの指先がどこへ向かっても瞳の身体はますます高ぶっていくようだった。
「グッド?」
オジサンは手を休めて瞳の顔を見た。
「え・・・?」
瞳は真っ赤になった顔を弱々しくもち上げたが、息を整えるだけで精一杯という感じだった。
「◎×□▲」
「・・・?」
裸のオジサンが優しそうな声色で何か言う。
(?)
絵美は反射的に松山のほうを見た。
「ん・・・?」
松山は「なんて言ったのよ?」と問いかけんばかりの絵美の視線に気が付くと、わざと彼女の股間を一瞥した後で「何?」と聞いてきた。
「・・・」
裸体を眺められた絵美は堅い顔をして何も答えなかった。
「◎×▼△□?ハハハハ」
その二人に気が付いてか、絵美のすねの当たりで作業をしていたやさしいオジサンがなにやら言いいながら笑いかけてくる。
「△□ハハハハハ」
「ヒヒヒヒヒ」
「×○」
松山までくわわって、訳のわからない言葉の会話が始まると、絵美はさらに険しい顔になった。
(ねえ!みんなしてからかってるわけ?)
「オウ・・・◎×□」
全裸の美女の不機嫌な顔を見かねたのか、オジサンが松山に何か言ったようだ。
「ああ・・・」
松山はおもしろそうに笑いながら、絵美の方へ向き直った。
「瞳さんに『我慢しなくていいよ』って言ってたんですよ」
「えっ・・・?」
唐突に自分の名前を呼ばれ、瞳も顔を上にあげて松山を見た。
「我慢・・・してるでしょ?」
松山は卑猥な微笑みをうつぶせで横たわる全裸の少女に向けた。
「いや・・・そんな・・・」
正直な瞳は真っ赤になって絵美に助けを求めた。
絵美はどういっていいかわからないまま、ただ不満だけをぶつけた。
「そんなの・・・関係ないでしょ?」
「ふん・・・」
松山はもう一度絵美の真っ白な裸体を舐めるように見ると、まとわりつくような声で
「そうですかぁ?」
とだけ言った。
「な・・・」
絵美はおもわず口ごもった。
「さっき彼らが何て話してたか聞きたいですか?」
「え・・・?」
外で二人のやりとりを聞いていた西田たちが「ききたーい」と声を上げるのが聞こえた。
「どうですか?」
松山はそれを無視して、二人の全裸の乙女の反応を待った。
「・・・なんなの?」
絵美はわざと不愉快そうな声でたずねた。
松山はチラッと瞳の上気した顔を見ると
「聞かない方がいいかもしれませんよぉ?」
と言った。
「・・・」
「・・・」
松山の言い方に、不安を隠しきれない二人の娘はすこし考えるように言葉を止めた。
オジサンたちも手を休めてその様子を見ている。
(・・・)
じっさい聞かない方がいいのかもしれなかった。嫌な予感を、現実のものとしてしまうだけのような、そんな気がした。
「瞳さんはね・・・」
沈黙の意味を勝手にとったか、あるいは待ちきれなくなったか、松山は瞳の顔を見て言葉をつないだ。
「・・・『気持ちよかったか?』ってきいた・・・それから『結婚はしてるのか?子供はほしいのか?』そんな事をたずねてたんですよ、彼は」
そういうと松山は胸毛のオジサンを指さした。
「で、ベイビーはほしいか?ってきいたら、あなたは『欲しい』って言った・・・だから・・・」
そこで言葉を切って絵美の方へ視線を走らせた。
「だから『この国で子作りのためにかかせない特別なマッサージをしてあげようか?』って聞いたんです」
(!)
瞳がゴクリとつばを飲み込んだ。
「子作りに励みたくなってきました?あはは・・・」
松山は瞳の落ち着きのない反応を楽しむようにそういって笑った。
「フフフ」
裸のオジサンもつられて笑うと、休めていた手を動かし始めた、瞳の柔らかいヒップのふくらみへ。
「アッ!」
瞳は思わず枕に顔を突っ伏した。
白い丘を征服した後、数本の触手はそのまま谷間をまさぐるように割れ目へと入っていく。
「アゥゥ・・・ンムゥゥ・・・」
瞳は枕を抱きかかえるようにして、口を押さえつけて耐えた。
(瞳ちゃん・・・)
気遣う絵美をあざわらうように、松山の話はさらに続いた。
「パートナーもあなたも大満足ぅ!・・・そんな感じですね」
絵美はそんな松山をにらみつけた。
「やめさせてよ!」
「えぇ・・・?なんでですかぁ?」
松山は全く動じない。むしろ楽しむかのように、気の抜けた声でこう続けた。
「だって、自分で頼んだんじゃないですかぁ?・・・・・・あなたもね」
最後だけやけに力がこもった声だった。
(・・・!?)
「な・・・?」
絵美は首を持ち上げるようにして松山を見たが、そのとたん彼の股間の物体が目に入り、あわてて顔を背けた。
「な・・・?わたし・・・?」
絵美は動揺を隠せなかった。
「ァッ!ン・・・」
となりでは瞳が、いつの間にか足先の指の間を指でもてあそばれていた。
「イッ!・・・ァ・・・」
快楽から逃れるためだろうか、まるで水族館のアシカか何かのショーのように上半身が激しく反り上がり、ひねられ、左右に振られた。身体の下に隠されていた乳房はプルンプルンと揺れながら、時折その頂点にたつ敏感な蕾を観客の前に晒した。
「さっき、瞳さんと同じでって言ったでしょ?」
不安で勢いを失った絵美めがけて松山が追い打ちをかけた。
「あなたも・・・おなじよーに・・・」
そのとき、動きを止めていたオジサンが絵美の足の裏のあたりを指で押した。
「ンッ」
(そんな・・・)
心地よさに含まれる快楽を今度ははっきり感じて絵美は愕然とした。
「そう、同じように、気持ちよぉぉくしてくれますよ・・・」
松山は性欲の固まりのような表情をうかべて続けた。
「だから、我慢しなくていいんです・・・」
「アッ・・・アァァァッ!」
まるで松山の言葉にあわせたかのように、瞳のささやかな抵抗が終わりを告げた。
(瞳ちゃん!?)
「イッイヤァァッ!イッ・・・アアアン、アッ!」
裸のオジサンはいつの間にか彼女の両脚を大きく広げると、まるで島本に見せつけるかのように、お尻の方から手を回して指先で彼女の秘所をまさぐっていた。
(・・・そんなぁ・・・)
態度も顔立ちも幼くてm性欲のかけらも感じさせなかった瞳の、あられもない姿に自らの運命を見て、絵美は眼の前が真っ暗になった。
「×▼□○△」
「・・・?!」
足下でオジサンが何か言った。
「どうせ・・・」
松山は卑猥な笑みを浮かべながらも、もったいぶった口調で通訳した。
「どうせ、我慢できないんですからね」
「・・・・・・!」
絵美は反論しようとして口を開きかけたが、あきらめて口を閉ざしてうつむいた。
「ウィアー、プロフェッショナル!」
オジサンがうれしそうにそういって微笑んだ。
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