第19話
松山の舐めるような視線から逃れるようにうつむいて寝ていた絵美を、オジサンの優しい微笑みが真っ正面からのぞき込んだ。
「リラァックス」
へんな発音だったが、そう言ったように思う。
だが、その言葉よりも、視界を遮ってもらうことの方が、まだしも絵美を落ち着かせる効果を持っていたようだ。
オジサンが絵美の真横にたつと、絵美はようやく視線の定まりどころを見つけたかのように、その毛むくじゃらの手を見つめた。
指先がローションで光っている。絵美は二度目の陵辱への心構えを、固く結んだ唇に浮かべた。
「オケイ」
オジサンはそういって一人で納得すると、絵美の肩に手を伸ばした。
(あ・・・!)
隠した胸の上空を太い手が通過していくとき、絵美は反射的に身構えたが、相変わらず手に力は入らない。それがますます彼女を不安にさせる。
ギュッ
絵美の細い肩を台に押しつけるように、十本の指が何度も力を込めて白い肌に食い込む。
「・・・ン・・・!」
微妙に場所を変えながらツボを刺激され、絵美の口から声が漏れる。たぶん気持ちいいのだろう、ふつうなら。
だが今の絵美にはそのマッサージを楽しむ余裕は全くなかった。
肩を軽く揺さぶられるだけで、絵美の腕は彼女が隠そうとする大事な場所からすぐに動いてしまいそうになる。
(あっ!)
最初の不意の一撃で、絵美の乳房はその白い丘のほとんどを露出させてしまった。位置を確認しながらチラリと見た松山の顔は、あいかわらずあのニヤニヤ笑いだ。
(もう!)
絵美は自分の柔らかいおっぱいにしがみつくようにして乳首を隠した。
手のひらサイズでちょうどいい、なんて形容をそのままあらわすように、彼女の柔らかい、整った二つのふくらみは自らの手のひらの中でプルンプルンと暴れた。
絵美自身、自分の胸の感触をこんなに感じたこともなかったが、見ている側にも絵美の手を通してその柔らかい触感が伝わってくるようだった。
やがてオジサンの両手は、胸の丘を再び空路で飛び越えて、麓のあたりに着陸した。
(あん・・・!)
少々乱暴な着陸だった。指先だけではなくローションを塗られた手のひら全体が絵美の裸の肋骨のあたりを滑りながら移動した。
見知らぬ男の愛撫・・・さきほどの手袋越しではなく、直接男の手で裸体をなで回される感覚が、麻痺しかけていた絵美の羞恥心を揺さぶった。
オジサンの両手はまるでスケートでもしているように絵美のお腹から胸の下、それから脇腹にかけてを縦横無尽に滑り、時折指先で立ち上がっては絵美のツボを刺激する。
「ん・・・はぁ・・・」
肋骨の間を指先が移動しながらツボを押すと絵美の清楚な口もとから荒い呼吸が漏れる。
ツボを押されるたびに体の中でゆっくりと何かが溶かされていく。そんな甘い恐怖に絵美は困惑していた。
「フム」
オジサンはおへそのあたりまで存分に楽しんでから少し息を整えた。
(次は・・・)
オジサンの指先は次第に絵美の下半身へと向かっていく。くびれたウエストを通過して、丸みを帯びた下腹部へ。
(あ・・・あ・・・・ああ・・・)
絵美の白い肌は敏感にオジサンの指先の動きをトレースして、彼女に危機を知らせていた。
手袋がなくなっただけでこんなに違うのだろうか、マッサージというより、裸をもてあそばれているという方が適切だった。
脇腹をぎゅっと何度も押していたオジサンの手は、骨盤に沿って絵美の下腹部へと裸体の表面を登り始める。
(どこまでするのぉ?!)
骨盤の左右に分かれていた毛むくじゃらの両手がツボを刺激しながら次第に近づいていく。
ギュッ・・・ツー・・・ギュッ・・・
そこはすでに普段なら下着に隠されている場所だ。そして両手の流れが合流するところには絵美のささやかなアンダーヘアがある。
(・・・!)
絵美は目をつぶった。
オジサンの指は今度は容赦なく絵美の股間へ向かっていった。
サワッ
柔らかい陰毛が指先でかき回される感触が伝わってくる。
(!)
おそるおそる目を開けると、そのとたんに、まっすぐに絵美の秘所を見据えるオジサンの姿が目に入ってくる。
(・・・いやぁ・・・)
オジサンは秘部を斜め下側からのぞき込むようにして、なにやら真剣な顔をしている。視線はヘアと、その下・・・もちろん絵美自身はそこに何があるかよく知っているあの場所から動こうともしない。
ギュッ
指圧がかかると、皮膚が引っ張られる感覚が感じやすいところまで伝わっていく。
(・・・もぅ・・・)
生涯限られた相手にしか見せないはずの秘密の場所が、すでに明け渡されてしまったことをあらためて感じて絵美は愕然とした。
視界の片隅では松山がまっすぐこちらに顔を向けている、その視線の先は確かめるまでもない・・・いや、確かめる勇気が今の絵美にはなかった。
オジサンは絵美の陰毛の存在を全く意にも介さないように、ギュッギュッと次第に下へ、下へと力を込めた指先を動していく。
(あ・・・あっ・・・)
並べられた親指が股間にできた谷間へと落ちそうになるのを絵美は許しを請うような視線で追うことしかできなかった。
ギュッ
(だめっ!)
親指が秘所へ分け入るのを察知して、絵美は思わず顔をそむけた。
「ム・・・」
オジサンは親指を軸にして蜘蛛のように指先を広げて絵美の下腹部に這わせると、
「フンッ」
と一気に力を込めた。
「アンッ・・・」
白い裸体がビクリと小さく反り上がり、口からは悲鳴のような声が漏れた。
(何・・・???)
絵美は驚いてオジサンの方を見た。
「・・・ンッ・・・!」
そのとたん、第二撃がやってきた。
今度は声を上げずに耐えたが、体を何かが突き抜け、頭が一瞬クラリとする。
「・・・ッ・・・」
もう一度。裸の肌の表面がゾーッと冷たくなったような感覚の後、次第に熱いものが体の内側から皮膚を火照らせてくる。気持ちいいとか悪いとかじゃなく、何か不思議な、ある種の臨死体験のような感じだった。
(何・・・今の・・・?)
「・・・?」
不安そうな絵美を気にしてか、オジサンの真剣な顔がほころび、ニコリと笑いながら手を股間から離した。
「オケイネ」
「・・・あ、ええ」
絵美は両手の位置を戻しながらあいまいな微笑みを返した。
オジサンは先ほどの衝撃で立てられたたままになっていた絵美の右膝を優しくつかむと、彼の作業がしやすいように、それを台の上におろして両足をそろえた。
スラリとした両脚が綺麗にそろえられ、それと対照的な、ローションにまみれた毛むくじゃらの手が、膝から太ももをまるでゆっくり移動した。
(あっ!)
ふたたび秘所に迫る男の手におびえた絵美をあざ笑うように、オジサンの手はその直前で太ももの谷間から浮上し、裸体の表面をなでるようにして絵美の陰毛を通過すると、再び膝と股間の間をまるでカンナをかけるかのように往復した。
「◎×▲♪」
最後に、オジサンが鼻歌を歌いながら真っ白な両脚を足首までなでるように楽しむと、両手を下腹部に戻していった。
(・・・またなのね?)
絵美は彼の両手が再び自分の下腹部のツボをとらえに来るのを感じて身構えた。
「◎□×♪・・・フン」
オジサンは鼻歌を歌ったままでさっきと同じ場所を指先で押した。
「あぁっ!・・・ンン!」
構えていたにもかかわらず声を上げずにはいられなかった。先ほどとは違う感覚が絵美を貫き、あわてて口をつむんで耐えた代わりに、白い裸体が細かく左右に揺れた。
(・・・いやぁ・・・!)
今の感覚が自分の体のどこからやってきたのか、今度は絵美にもはっきりわかっていた。皮膚が引っ張られたのか、それとも指の圧力のせいなのかわからないが、オジサンの一撃は、その下にある絵美の秘所の、裂け目の中に隠された一番感じやすい器官にまで達したのだった。
(・・・そんな・・・?)
それも、直接触られたのかと思うほど強烈にだ。いきなり快楽の扉をノックされた絵美は一瞬我を失った。
オジサンはそれにかまわずに今度は太もものツボを探しに両手を動かした。
(あ!)
絵美が我に返ったときにはすでに両脚は太い腕で固定され、膝と膝の間には僅かな隙間が残された。
先ほどの乱れがぴったり閉じていた両脚をほんの数センチほど開かせている。
(あ・・・あ・・・!)
ほんの少しの隙間だが両脚をくっつけていたときとでは安心感が全く違う。
オジサンはかまわずにマッサージを続ける。
絵美はその様子をおそるおそる見ると、恥ずかしさのあまりすぐに目をそらした。
(・・・だめ・・・!)
オジサンは鼻歌を歌いながら絵美の太ももを押さえ込むようにしている。視線は当然そこから両脚の隙間に出来た細い谷間を通り、彼女のもっとも恥ずかしい裂け目をのぞき込むようだ。
太ももの隙間はわずかだが、まるでこのためにあるかのような照明は、絵美の白い裸体の、薄い赤褐色に染まったその部分を隅々まで照らし出していた。下からの二人の男の視線はそこに縦に走る亀裂を見逃すはずはない。
(い・・・いや・・・もう・・・ほんとに・・・)
熱いほどの視線を股間に感じながら、絵美はあきらめたように頭を台の上に力なくのせて横を向いていた。淫らな裂け目の襞の奥で、じんじんとクリトリスが快楽の余韻を残しているのが彼女をさらに不安にさせた。
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