第12話


 壁に向かい、震える手で海パンを下ろしながら、島本は自分の後ろに広がっている光景が現実のものであるということを信じられずにいた。
 タイプは違うが三人の美しい娘が素っ裸ですぐそばにいる。まるで雑誌から抜け出してきたヌードモデルのような由美子、信じられないほど真っ白で美しい肌を持った絵美・・・そして瞳。
 島本は勃起したナニをどうするか考えながらそっと首を右に曲げて、横目で瞳の裸体を眺めた。
 (うっ・・・)
 むき出しにされた両脚の真っ白な太もものあたりまでが視界に入る。
 その上には片手でかろうじて隠された黒い茂みがあり、さらにその上にはさきほど掠め見た乳房と、恥じらうかわいらしい瞳の顔があるはずだ。
 (失礼しますっす!)
 島本は覚悟を決めると、怒張して皮から抜け出したイチモツを気遣ってすこし前屈みになりながら後ろを向いた。
 三人の裸の娘は変わらずにそこにいた。
 いつの間にか絵美が台の上にうつ伏せに寝ている。背中からお尻、それからスラリと伸びた脚先まで一糸まとわぬ姿だ。
 (おお・・・)
 丸見えのお尻は小さく、まるで生まれたての赤ん坊のように軟らかそうな丸い丘が二つ並んでいる。身体を隠す手が無くなった分、絵美が全裸であることが強調された。
 オヤジが台に座るように指で示した。
 「よい・・・しょ」
 島本はわざとらしく小さな声を出して台に腰掛けた。女たちはだれもこちらを見ていないが、自分の股間の突起がいつになく大きく膨らんでいるのが恥ずかしかった。
 (こんなんあっていいんすか・・・!)
 『裸の女の前で裸になる』ということは島本にとって未知の、しかしあこがれに満ちた世界であった。そのあこがれが思わぬ形で現実になっている、しかも目の前にあるのは、さっきまで普通に世間話をしていた身近な娘たちの裸である。
 先ほどから上目遣いにチラチラ見ていた瞳のあられもない姿を眺めてみる。
 (瞳さん・・・)
 食事の後で挨拶したとき、ノースリーブのポロシャツからピンク色のブラジャーの肩ひもがのぞいただけで、会話がうまくできないほど興奮したのがウソのようだ。あのとき、ついつい服の上から想像してしまった瞳の乳房を一瞬とはいえ全て見てしまった。
 (キレイだったっすねぇ)
 片手ではほとんど隠し切れないその膨らみを必死に隠して寝ている姿を見ていても、その下にある二つのつぼみがすぐに思い浮かんでくる。小さな、ツンと立った朱茶色の乳首・・・口に含んだらきっと甘いのではないだろうか、と島本は思った。
 「オッケィ」
 島本の後ろに立ったオヤジはニコリと笑いながら肩を揉み始めた。自然と姿勢がよくなり、それにつれて視界が広がる。
 「メガネは・・・?」
 メガネをとるジェスチャーをすると、オヤジは薄笑いを浮かべて首を振った。
 (よかった・・・)
 正直に安心して、許可がおりたとばかりに瞳の裸体を観察する。
 股間を隠す瞳の指の間に黒い影が見える・・・爪を短く切った細い指の先と、両方の腿の付け根の間に僅かな空間があり、肌の色が濃くなった場所が照明に照らされている。
 (すご・・・まじで)
 島本は食い入るように、瞳の「女の器官」をのぞき込んだ。白い肌が股間のそこだけ日に焼けたように茶色く染められ、肉の割れ目が縦に走っている。瞳の必死の抵抗で上の一部分しか見えないが、そのさらに下、閉じられた両脚の間の奥深くまで、その割れ目がつながっているのを想像して島本は激しく勃起した。
 「フフン」
 瞳の横に立っていたオヤジはそんな島本の姿を見て鼻を鳴らして笑うと、ゆっくりと寝ている瞳に手を伸ばした。
 「・・・!」
 瞳は声を上げることもできずに怯える視線をオヤジの方に向けた。
 (・・・!)
 島本は息をのんだ。
 オヤジは毛むくじゃらの手で、胸を隠していた瞳の右手の手首をつかみ、ゆっくりとそれを下にずらしていった。
 「ぅぅん・・・ん・・・!」
 瞳は声にならない声を上げたが、不思議となされるがまま、抵抗らしい抵抗もせずに身体を隠す手を胸からはずしていく。
 「・・・ぁっ・・・」
 瞳の口からため息が漏れる。曲げた右手の肘でかろうじて隠していた右の乳房が露わになったようだ。
 (み、見えないっす)
 だが、島本の位置からはオヤジの白衣と瞳の腕とで、たわわな丘の頂点がちょうど見えない・・・島本は無意識に前のめりになり、首を伸ばして瞳の乳首をのぞこうとした。
 「フッ」
 瞳の手首を持ったオヤジはそんな島本を見てニヤッと笑うと、彼の視界を確保するように、わざわざ手を持ち替えてみせた。
 「ぅ・・・」
 (あ・・・)
 障害物は取り払われ、島本は再び瞳の裸体を真っ正面から拝む形になった。幼さと色っぽさの両方が不思議な調和を示す、生贄の裸体の向こうに、熱と羞恥で真っ赤に染まった瞳の顔が見える。
 (カワイイっす・・・)
 島本はその表情と、今にも彼のためにその全てをさらけ出そうとしている瞳の軟らかそうな肉体とを交互に眺めて思った。
 「ん・・・・・・」
 瞳はその視線に気がつくと「見ないで」と頼み込むように島本を見た。
 (・・・)
 島本は一瞬躊躇して視線を外したが、童貞男の欲望はいまや理性を完全に打ち砕こうとしていた。
 (・・・ごめんなさいっす)
 島本は瞳と目を合わせないように注意しながら、彼女の屈辱の儀式を特等席で鑑賞する幸運を享受する道を選んだのだ。
 
 瞳の乳房からは片方の覆いがすでに取り払われ、色づいた蕾のような乳首が今にも視界に入ろうかとしている。
 「・・・イ・・・」
 イヤ、と言おうとしたのだろうか、瞳のふっくらとした口びるからわずかな音が漏れる。
 瞳の右手は軽く指を曲げ、自らの左の乳房を捕まえるようにしていた。まるでそこから滑り落ちるのを防ぐように曲げられた指先が、ふくよかな隆起の頂点近くを隠している。
 「フ・・・」
 オヤジはそれをあざ笑うように軽く息を吐くと、ゆっくりゆっくりゆっくりと瞳の右手を下に下ろしていった。
 (は、早く!)
 島本は遠慮を忘れ、瞳の乳首があるはずのあたりを凝視した。
 「・・・・・・ンン・・・!」
 手のひらが乳房をはずれた。
 指先が乳首に引っかかるようにして、名残惜しそうに最後の抵抗を試みる。
 (おおお・・・)
 乳房全体が僅かに残った指先に引っ張られるようにして身体の下の方へ向かい、そして、やがて限界を迎えた。
 
 プルンッ
 
 音が聞こえるのではないかと本気で思った。
 島本の見ている目の前で、まるで愛し合う恋人が引き裂かれるかのように、瞳の指先が乳首から離れた。下に引っ張られていた大きな乳房は、赤い蕾をのせたままで元の場所に急いで戻ると、若い肌の弾力と柔らかさを誇示するように、二度三度プルプルと震えて止まった。
 (おおっ)
 同時に肘に隠れていたもう一方の乳首も露わになる。視界の端に映る泣きそうな瞳の顔を見ないようにしながら、島本は瞳の乳房の全てを観察した。
 先ほど一瞬だけ見えたそのたわわな膨らみは、覆っていた右手を外されてなお全く形を崩さないままで、瞳の小柄な身体の上にならんで天を向いていた。
 Dカップはゆうにあるだろう、幼い顔には不釣り合いなほど見事な、やわらかい肉の丘の上には、白い肌から薄い朱茶に色を変えた乳輪がはっきりとその存在を誇示している。まだわずかな硬さをしめしているだけの乳首は、それでも以外に大きめで、ポツン、ポツンとそれぞれの頂にはっきりとしたシルエットをつくっている。
 (・・・舐めたい、舐め回したいっす)
 島本の物欲しそうな視線に満足したのか、オヤジは瞳の右手をつかむ手のスピードを急に上げると、それを身体の横に並べるようにポンと置いた。
 「・・・・・・」
 指先がピクリと動いた以外に瞳は抵抗しない。上からの照明を浴びて瞳の裸体が白く輝いて見えた。
 (次は・・・!)
 オヤジはすぐに左手の除去に取りかかった。
 「・・・ァッ・・・!」
 ショックから抜けきれずにいた瞳は、オヤジの次のねらいに気がつくと小さな悲鳴をあげ、右足を僅かに曲げて股間を隠そうとした。
 (おっ!)
 だが、思いとは逆に、その拍子に左手の位置がずれて隠しきれない黒い茂みの半分ほどが島本の視界に晒される。
 「オケイ!」
 オヤジはもはやその手を戻す隙さえ与えなかった。指が陰毛に分け入るのもかまわず、躊躇無く瞳の手首をつかんで瞳の裸体の横に置く。
 「・・・ィ・・・ァ・・・」
 とぎれとぎれの嗚咽が聞こえる。おもわず心配になって島本は瞳の顔を見た。
 (あ・・・)
 「・・・」
 とたんに濡れた大きな黒い瞳と視線が合う。二十歳の乙女にはあまりにも大きな衝撃だろう、涙こそ流していないが、不安、羞恥、混乱そんなもろもろが入り交じった感情がその眼にめまぐるしく浮かんでは消えていく。
 (・・・ごめんなさいっす、瞳さん)
 そう思って視線を外したものの、それはふたたび瞳の股間で止まってしまった。
 黒々とした大きな逆三角形の表面が、瞳のもっとも秘密の場所へと向かって大きく波打っている。
 かわいらしい顔からは想像できないその深い深い茂みは恥丘の上を覆い尽くし、淫らな亀裂へと向かう谷の上から、ツタのように垂れ下がって秘所を隠そうとするようだ。
 「フゥ・・・」
 オヤジが島本をチラリと見ながら、瞳の曲げていた膝をめんどくさそうに元に戻した。
 (み、見えるっすよ・・・!)
 全裸で仰向けに寝っ転がったままで気をつけの姿勢を取らされた瞳の、股間を真っ直ぐに見上げる位置に島本がいた。
 適度に締まった両脚はぴたりと閉じるとちょうど股間に僅かな隙間をつくる。照明はその僅かな隙間さえ照らし出すように獲物の裸体を四方から囲み、観察者の欲望に応えていた。
 島本は瞳の、乳輪よりも僅かに色濃く染まったその部分を凝視した。黒い茂みと、溶岩のように色づいた肉の大地の中に、瞳がもっとも隠したかったはずの秘密のクレパスが縦に走るようすがさっきよりはっきりと見えてきている。
 「オーケイ?」
 肩を揉んでくれていたオヤジが急に声をかけてきた。
 「(今日の獲物はどうだい?)」
 そう言っているように島本には聞こえた。


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