千里編 ―カガクハヒトノタメニアルー その3
全身に白濁を纏った千里は時折思い出したかのようにびくんと身体を震わせる…、あれからどの位たったのだろう? 窓から見える空はすでに真っ暗で放課後から今までの時間の感覚が無い。あっという間にも気が遠くなる程長かったようにも感じる。
化学部室内に漂う濃密な精臭の中で、千里は意識を取り戻した。既に男達の姿は無い。
「っ…くぅ……」
自分の身体がこんなに重く感じたことはない。何と上半身を起こすが、腰に力が入らず立つのはまだ無理そうだ。唇を動かすと乾いた粘液がぱりぱりと音を立てた。
「めちゃめちゃにされましたね…」
全身を覆う精液の残骸が起こった事象を物語る。口内に精液の匂いが充満し、わずかな痛みを残す膣内からはどろりとした精液が溢れ、お尻の穴も同様ひりひりとした感触が少し前まで熱い肉棒が入っていたこと思い出させる。
今日、千里は全ての【初めて】を失った。
(まぁ…別に大切に取っていたわけではありませんが)
自分でも驚くほどその事はあまりショックではない。正気に戻った時泣きじゃくるかと他人事のように考えていたのだが…、
(あんな人達に……)
ぶるっと快感の余韻が残る身体が震える。いまだに感触の残る下腹に甘くじんじんとした痺れにゆっくりと、噛みしめるよう記憶を反芻する。
無理やり処女を奪われた後、別の男にしつこく陰部を刺激されておしっこのように、何度も愛液を噴出させられた。潮と言うらしい。腰が抜ける程何度も強制され、力の入らなくなった尿道は堪え切れず、5人の前で結局お漏らしをしてしまった。
グロテスクとしか思えなかった男性の器官を無理やり咥えさせられ、その汚汁を全員分飲まされた。吐きそうになるほど気持ち悪かったが、1人の肉棒を口に咥えている間に全身を弄られて、男の射精のたびに指と舌でイかされた。快感に溶けて、けだるさと酸欠に意識が朦朧として自ら進んで男のモノを咥え丹念に舌を這わせて射精まで導き、終わった後も尿道に残る分まで飲む事を教えられ、口以外の部分にかけられた時は自分から指で集めて口に運んだ。
痛みの残る秘部を男達に入れ替わり犯され、悲鳴を上げ幼子のように泣き喚いたが男達の興奮を煽っただけで何度も子宮内射精された。意識が朦朧とするまで犯された時、突然痛みを上回る快感に襲われた。気持ち良くなった事を男達に隠そうと今度は声を押さえたが、それに気付いた男達に激しく膣内を掻き回されて、無理やり嬌声を上げさせられた。何度も気持ちいいと言わされて絶頂を迎え、それでも快感の引かない身体を男達に哀願までして抱いてもらった。自分の子宮の位置や、感じると子宮が降りてくる事を男の肉棒に教えられた。膣内を擦られるたびに快感の声をあげ、奥に精を注がれるたびに私の膣肉が硬い肉棒に絡み付き、痙攣のように打ち震えて絶頂した。
それでも男達は飽き足らずお尻の穴まで犯された。引き裂かれる痛みは処女喪失と変わらず、次第に快感を得るのも同じだった。膣内よりも肉棒は大きく熱く感じ、腸を逆流してくる感覚と排泄感に声を張り上げ、大きく広がったお尻の穴を擦られてイってしまった。奥まで入り込んだ肉棒を排泄するよう自らで吐き出すよう言われた時は羞恥で目の前が真っ暗になったが、逆らうこともできず、嬌声を上げて排泄の…それに伴う甘い悦楽に獣のような声を出した。5人分の精液を腸内に溜めこまされ、それを2巡繰り返し、5人に排泄の許可をねだる事を強制され、焦らされながらも許された時、開放感に涙を流しながらお尻から精液を噴出して快感に悶える身体を止めることが出来なかった。
もはや、抵抗する意思もなく、ただ男達の与えてくれる快感を受けれ、それでも足りないと自ら懇願した。
「…くやしいけど気持ちよかったですね、死ぬかとも思いました。まさかこの私の思考の余地まで奪うとは……」
最後のは前も後ろも同時に犯され、口と手でも男性器に奉仕して6人全員での交わり、全身に降りかかった精液と床を濡らす白濁の水溜りはその名残だった。
(獣…ですね)
所詮人間も分類上は動物、自分自身も獣だったということを思い知り千里は自嘲気味に笑う。
今も身体の奥に残る快楽の残り火が消える事なく、くすぶり続けてる。
「少し…相原先輩の気持ちもわかりましたね……」
白濁の中で千里はふらつく腰で何とか立ち上がる。男の精を受けたからか、それもと心境の変化か未成熟な肢体に何処と無く…以前よりもはっきりとした女を感じさせる。
(きっと相原先輩もこの快感を知ってしまったのでしょう。知性や理性までも吹き飛ばしてしまうこの感覚を。実に興味深いですね……)
つい先刻までの女の貌が消え、千里は研究者の顔になっていた。
「あの馬鹿達に感謝ですね………うふふふふふ……そう、お礼はしなければ…ね?」
化学準備室の魔女は、疲れた身体を引きずるよう己の聖域へと消えた。
―*―
「結局……そのなんたらフェロモンなんて存在しなかったってわけ?」
放課後の淫宴を微塵も感じさせない清廉とした化学部室。あれからしばらくすぎたとある日、千里とたくやはのんびりとお昼を部室で過ごしていた。
「ええ、残念ながら」
淡々とうなずく千里に、たくやはがっかりしたように肩を落とす。
「じゃあ…あたしがこんなに襲われるのは…」
「先輩自身にスキが多い…と言うことでしょうね……あっ、先輩。今日も【部活】は無しでお願いします」
千里の言う【部活】とは、放課後のたくやのお勤めを言っているのだろう。
(……そのフェロモンが存在しないのなら必要ないんじゃないの?)と、言いかけた言葉をたくやは何故か飲み込んでしまった。
「えっ…ああ…、うん。わかった」
「……どうしました? なんとなく残念そうに聞こえるのは私の気のせいでしょうか?」
「そっ! そんなこと無い〜! だけどまた無いの? まぁ私は良いけど…」
昼休みの残り時間も少ない事に気づき、たくやが腰を上げる。
「……先輩、今すぐ男に戻れるって言ったらどうします?」
細すぎず肉感的でありながらも締まった身体はある意味理想的な女性のラインだろう。自分には無い女の魅力に千里は暗い羨望を憶える。だからこそ……千里は部室を出て行くたくやの背に聞いてしまった。
「……!!」
化学部室の中で二人。しばらくの沈黙―――
「ホントに……戻れるの?」
ゆっくりと…確かめるよう問いかけるたくや。その表情は千里からは見ることはできない。
「…………」
同様、たくやにも千里の顔は見えない。
再びの静寂。
決して長い時間ではないが、二人の間では随分長く感じる刻。
「すいません………ちょっとした興味本位で聞いてしまいました」
沈黙を破った千里の声にたくやの肩が落ちる。
「そっか…………まだ………うんっ、びっくりした。あっ、でも急いでよ? このままじゃ明日香にフラレちゃうから」
あはは♪とこちらを振り向くたくやはいつもの表情だ。
(今のは…落胆ですか? それとも安堵? ……何にせよ…即答では無いのですね)
明るい声を残して部室を去るたくやの背に、千里は心の中でしか続けられなかった。その答えを今はまだ知りたくない、千里にしては珍しく答えを出すことから逃げてしまった。
(随分…私らしく無いですね……)
開かれた窓の外から見える空は青い。今の千里には眩しすぎるほどに――。
―*―
「っ! あああああああああああああああああぁああああぁあ!」
日がすっかり落ちた放課後、わざわざ暗幕まで降ろされた化学部室に嬌声が響く。
か細い身体を大きく波打たせ千里は絶頂の声を上げた。部室の壁は全て防音になっているので外に漏れる心配は無い。千里は激流に飲まれた小船のように男達に弄ばれながらも、身体が快感を求めて従ってしまう。
「ほんと…素直になったよな? こいつ」
最後の一滴まで少女の奥に精液を注ぎ込み男は肉棒を抜く。小さな膣から白い粘液が溢れて、その下の窄まりへと伝う。
(んっ…お尻に力が入りません…)
既に肉棒を受け入れ、開ききった後ろの穴へ精液が流れ込む感触に身体を震わせた。
あれから何度、男達に身体を許しただろう?1度目よりも2度目、2度目より…回数を重ねる毎に敏感になっていく身体は貪欲に男達を求めた。
「ふぅ〜〜、今日も出したなぁ…千里ちゃんも気持ちよかった?」
放出を終えた男は千里の口の前にしなだれた男根突き付けながら尋ねる。
「んん〜っ! んぶっ…むぐぐぅ…かぽ…んっ…ちゅうううぅうぅうぅ」
開きっぱなしの淫裂からこぽりと精液を溢れさせたまま千里はそれを素直に口に含み、舌を這わせながら男を見上げて頷く。頬を満足気に上気させ、快感に瞳が潤んでいる。もともと探究心旺盛な千里だ、一度火が点けば止まることなく貪欲に、積極的に快感を求めた。
千里が行儀よく男の残滓を掃除している間に別の男が悩ましく揺れる細腰に手をかける。
「んんぅ〜!!」
男は自分以外の精液に躊躇することなく、一気に奥まで突き込む。突然の挿入に小柄な身体を跳ねさせる千里。非難するよう後ろの男に目を向けるが、口から肉棒は離さない。ずぶずぶと濡れた液体を撹拌する音。結合部から精液と愛液を吐き出しながら身体を揺さぶられ千里は男のモノを咥えたままくぐもった声を上げる。
(んんっ!! イった後は…んっ! 敏感になりますね!!)
膣内を掻き回す肉棒を無意識に締め付け、口の中の硬くなり始めたモノに舌を絡めた。
(おま○こと違って…口の中は動かさないと気持ちよくなりませんからね…)
後ろからくる衝撃に、肉棒が喉奥に入ってむせないよう舌で位置を調整する。身体が勝手に憶えたテクニックだ。
「すげぇな……こいつの舌の動き!」
口内を犯す男の肉棒はすでに回復している。千里は満足気に口から出しその先端を舌でなぞると嬉しそうに微笑む。
「うふふ…お掃除しただけなのに…もう元気になりましたね」
うっとりとした少女の貌に、周りで観戦していた男達も欲望を煽られ千里を取り囲む。
その気配を感じた挿入している男が、場の空気を読んで膣内から肉棒を抜く。
「うわっ! 抜こうとしたら絡みついてきやがる!」
残念そうな男の声。膣内にぽっかりと空いた空間に千里が物足りなさを感じて身をよじる。
「どうして……なんで抜くのですか! 私はまだ満足していません!!」
随分従順になったが、生意気な口調は変わらない少女。これがこの河原千里の持ち味なんだなと男達が笑う。
「ほら…欲しい場所を自分で広げてお願いしてみな?」
「むむっ…屈辱を…」
釣り目がちの瞳で男を睨むが、横一列に並ぶ男達に身体を向けて千里は震える手で自分の秘唇を開いていく。大きく足を開き、耳まで真っ赤に染まるが顔を背けない。柔らかな肉の膨らみに沿える指にぬるぬると感じるのは先ほど掻きだされた精液では無く、こんこんと止まらない自分の愛液だ。
(顔から火が出る…とはこんな感じなんでしょうね…? しかし…不思議な昂揚を感じるのも事実です)
ぺろっと突き出した舌で唇を舐めると精液の味、それだけで下腹が熱くなり、じゅんっと奥が濡れてくる。
(うふふ…身体が刺激を欲しがります。貪欲ですね)
もう片方の手をすぼまった後ろの穴に伸ばす。
「欲しい場所を…自分で広げるんですよね?」
確認するように呟くと、視線の中で後ろ手に廻した手は慎ましい窄まりを広げる。わずかに盛り上がった火山状の肉の膨らみから、とろとろと精液が指を伝い塗らす。ひくひくと口を開ける後ろの穴まで男達に晒し、足を開いて腰を突き出した。
ごくり…と誰かの喉か鳴る。
(自分が動物になった気分です…天才である河原千里では無く…)
――ただの一匹の雌。
自分の想像で身体が疼く。ただそれだけで軽く絶頂してしまった身体を小刻みに震わせる。
「今…いったよな…?」
「そのくせ……顔はこっちに向けたままかよ…」
ぼそぼぞと呟く男達に挑発的な笑みを向けたまま、千里は見せつけるよう大きく口を開ける。艶めかしい肉色の舌を覗かせ、口角から溢れる唾液を気にする事も無く、【何か】を想定して虚空に舌を遊ばせる。
「んふふ…ほおぞ…」
両脇から突き出された肉棒に交互にむしゃぶりつく。下からごんごんと子宮を乱雑に突き上げられ、肛門は限界なほど広がって男のモノを締め付けている。二本の肉棒が胎内で動くたびに肺から空気が押し出され、獣の咆哮が上がる。
(んんぎぃいいいぎぎぎいいいいいいいいいいいいいいい!!!!)
肉棒に口を塞がれ、悲鳴も上げられない。じっとりと汗に塗れた身体を男達に挟まれながらも上下に動く腰の動きは止まらない。
(ほぉぐうう!! すごいです! 前も! うしろもぉおおお!!)
快楽の波が激流となって千里の全身を襲う。貪欲とはいえ、憶えたての千里に処理できる情報ではない。視点の定まらない瞳でただ快感を享受するが、それでも無意識に男の肉棒に食らい付く。意識が切り離されても身体は憶えこまされた動きを忘れない。
(すごぉおいい! ばらばらにぃ! ばらばらになるぅううう!!)
小柄な千里は体重が軽い、男2人に人形のように身体を浮かされ、力の入らない下腹に衝撃を送り込まれれば悶絶するしかない。
「あが! ひゅぎ! ひぎいいぃい! ひゅごっ! ひゅごぃいいいいいいいいい!!! んんっ! ぐぶっ…んんっ!」
暴力的な抽送に揺さぶられて、目の前の肉棒を縋るよう舐めしゃぶる。どんなに強く突かれても歯を立てず、口に含めない方は手で刺激した。交互に唾液を絡めてぐちょぐちょと擦り上げると肉幹の血管が脈動し、相手が気持ち良くなっている事がわかる。
「あぁはぁ…しゅご! しゅごいでふ! んんんっ! ち○ぽぉ!!」
信じられない言葉が口からでる。羞恥も、弄ばれる屈辱もない。あるのはだだ快楽だけ。
どんどんと男のモノが膣の奥に当たる。快楽に蕩けた身体は決して望んでいないのに、妊娠を許すよう子宮を降ろす。
「んぐううううぃいいい!!」
(当たって! 当たってます!! 私のおくううううくう!! ごんごんってぇ!!)
狭くなった膣を短い間隔で突き上げられ、意識が完全に飛びそうになるのを下腹に力を入れて堪えるが、その結果は隙間なく密着した膣ヒダが激しく肉棒に擦られて、また快楽を得てしまうだけだ。
(これっ!! 駄目です!! 駄目なのにぃいいい!!!)
力を抜けばイってしまう。しかし力を入れれば快楽をさらに噛みしめてしまう。気をそらそうと喉の奥まで肉棒を呑み込んだ。えずきそうになるが今は苦しささえ免罪符だ。
「えふっ!! んぐぐ!! かは! はぁ…あぶっ! うんんっむううう!!!」
じゅくじゅくと泡立つ唾液と愛液の音を響かせ、千里は必死に快感ではなく、イってしまうのを堪える。
(まだ…んんっ! こんなに気持ちいいのに! イクなんてもったいないですっ!!)
貪欲に快感は受け入れ、絶頂は拒否する。
「っ!!こいつまだイかないのかよ!!」
男達が悲鳴を上げる。つい最近まで処女だった千里より先に行くのはプライドに触るのだろう。こちらも必死だ。後ろを犯す男の腰が我武者羅に動き出す。
「がっ!! はぁあああああああああ!」
何度も犯されたとは言え、後ろの穴は今でも慣れない。決して離そうとしなかった肉棒すら吐き出して嬌声を上げてしまい、慌てて口へと咥え直す。
「んぶうぅう! んんっ…んむうううううう!!」
盛り上がった肛門を内へ呑み込み、引く動きに合わせて吐き出すと、延々と続く排泄感は絶頂へ導く甘い誘惑となるが、今の千里には望まぬ救済だ。
(駄目ぇええええええええええ! イくっ! イってしまいます!!)
後ろの穴は前と違い行き止まりはない。衝撃は身体を突き抜け口へ達し、振動を咥えたモノへと伝えると、まるで自分が肉棒に串刺しにされているような錯覚に陥る。
「んぎぃい! かはっ! ぐうう!! んんっ! あぶっ! ん…じゅぶぅうう! ずずぅ」
限界は近い。身体は小刻みに痙攣を繰り返している。それでも小さくイくのはもったいない、抵抗する意識を吹き飛ばすほどの絶頂を求め、千里は必死に飛びいく意識に食らいつき堪えた。
「んっ! かは!! あっ! イ…んんんっ!! えっ? …あああぁあああああああ!!」
突然、子宮が押された。
膣内は変わらず子宮を突き上げられているが、後ろを犯す肉棒の衝撃が薄壁の下から子宮へと叩き込まれる。正面と、やや後方から同時に、時には交互に突き上げられるたびに意識が瞬断される。一往復毎に理性という薄皮が剥がされ快楽は奥の本能へと届く。
「あっ…! ああっ…あっ…あっ…あっ…」
口から短い嗚咽しか漏れない。あれほど必死に咥えていた肉棒を吐き出し、ただ震える。
波。波。波…絶頂を求める欲求に押し流され、最初に決壊を迎えたのはきゅっと引き絞った膀胱だった。勢いなくちょろちょろと黄色い液体は結合部を濡らすが、止まらぬ男達の腰の動に飛沫となって巻き上げられる。
「ようやく…イきそうになってきたな」
半眼になった少女の表情から限界を悟る。咥えさせることは望めないので自らの肉棒を千里に向けてしごく。
「あふっ…はぁ…あっ…ああっ…はぐっ…は…あっ…ふっ…うふふ…」
焦点の合わない瞳で目の前で激しく脈動する男のモノを捉え、千里の口から笑みが漏れる。もはや理性は無い、あとは快楽の爆発を待つのみだ。壊れた笑みを浮かべる千里の身体を揺らし、男達はただ己の欲望のままその肢体を蹂躙する。
「あはっ…んふふ…あうっ! んんっ…はぁ…あっ…ははは…イグぅ!! イギまっ! ふふ…あがっ! イぎまずぅうううううううううううううううううううううううううう!!!」
爆発。意識の拡散。全身に広がる歓喜の鼓動。
目の奥に光が広がる。それは想像していた脳を焼き尽くす快楽では無かった。膣内に、腸内に…そして全身に感じる精液の感触と匂いに包まれながら、満ち足りた、穏やかな絶頂に身を浸しながら千里は意識を失った。
「あ…ふぅ……」
日に日に貪欲になる千里を5人がかりで満足させた男達は手近なイスに座り、自分たちも一息つく。
「まぁ、たくやちゃんより肉感的に寂しいけど……身体が小さい分締りはスゴイな。あの瞬間はマジで食いちぎられるかと思った…」
「しかも、積極的どころか……人は見かけに寄らないと言うか…こちらがもたなくなりそうだな」
「でも、ここまですれば…そのうちたくやちゃんも交えて…」
しばしの休憩。終わりでは無い、少し休んでまた次のラウンドを始めるつもりだ。
「うふふふ……女の前で別の女の話ですか? でも興味あります…しかし、今日はまだまだ私を満足させてもらいますよ?」
ぜえぜえと荒い息を吐きながらも千里が淫蕩に笑う。普段からでは考えられない色っぽい表情に男達の喉がごくりと鳴る。
「お前…もう目を覚ましたのかよ?」
「うふふ……さすがにちょっと休憩です…熱い…ですね。空調を強くしてきます」
汗に濡れ火照りを残す身体を起こし、少女はふらふらと化学準備室へ向かう。男女の熱気が充満した部屋は確かに蒸すような空気が漂っている。
「…女って怖いな」
「変わるもんだ…」
研究者の意地なのか…全裸に白衣というマニアックな少女の後姿を見送りながら男達は呟いた…。
―*―
(あれ…? ここはどこだろう…ああ…気持ちいい…身体がなんかふわふわする…)
真っ暗な闇を漂い、少女の意識はまどろんでいる。全身液体に包まれている気がするが少しも息苦しくない。生まれる前の母の胎内とはこんな感じだろうか? 安心を感じて水の温かさに身を任せる。
(暗い…けど暖かい…)
自分は今、闇の中にいる。目を開けているのか閉じているのかもわからない。前も後ろも上下左右も少女は認知できず、自分の腕や足が何処にあるかもわからなかった。まるで身体が羊水に溶け漂っているような感じだ。
(身体が熱い……なんか自分の身体じゃないみたい…)
じんじんと痺れにも似た熱さ。激しく内部から湧き上がる【何か】が出口を求めて荒れ狂う。
下腹に渦巻く熱がただじりじりと理性を焦がす。
「『ツヴァイ』…いい出来ですね」
どこからか声が聞こえる……知っている声だが思い出せない。
(誰だろう…私は………皆と一緒にいて……そう……突然甘い香りがして……そしたら眠くなってきて…あれ? みんなは何処? …ああ…ほうっとする…気持ちいい)
「『クイック・エボリューション・ツヴァイ』…いい出来ですね」
千里は満足気に目を細めて、目の前の人一人すっぽりと包み込むほどの巨大な装置に見惚れる。
「想定外の爆発も無し…完璧ですね」
潤沢な資金のおかげで改良に改良を重ねて完成させた自信作だ。その成果が装置内の水槽で漂う1人の少女と、化学部室で安らかな寝息をたてている一糸纏わぬ4人の少女達だ。
(全ては…これから始まったのですね…、最初は脳細胞を活性化させるために開発してものでした…)
どうしてこうなったのだろう? もっと違った道があった気がする…ふと浮かんだ考えを頭を振って追い払う。どんな分岐があったにせよ―――今が変わることは無い。
「…大丈夫ですよ? 最初は戸惑うでしょうがすぐに順応できます……相原先輩がそうでしたし」
すやすやと眠る少女達。空調から送り込んだ睡眠薬はよく効いている。目覚めるのはもう少し先だ。
「皆さん、綺麗ですよ? どう見てもかわいい女の子です」
千里は体格の良い引き締まった肢体を持つ、『ツヴァイ』の中でまどろむ少女に向けて語りかける。
『……』
千里の声が聞こえたのか、少女は目を覚まし分厚いガラス越しに小首を傾げ千里を覗きこむ。
「うふふ…私の言葉が聞こえていますか? あなた達には感謝しています。私に知らない世界を教えてくれたのですから」
少女の意識ははっきりしていないのだろう。きょとんとこちらを見ている。
今だ止まらぬ愛液を白衣の下に滴らせて千里は愛おし気に少女を見つめた。
「性行為など…馬鹿らしい、汚らわしいと思っていました。……私の世界の何と狭いことか」
珍しく自分が「間違っていた」と認める千里。普段の彼女を知るたくや達が聞いたらさぞ戸惑うだろう。
「そのお礼です。…あなた達にも私の味わった素晴らしい快感を教えてあげます。あなた達も楽しんでください」
白衣をひらひらと揺らし、千里は「うふふ」と笑うとそれにつられたのか、少女もうれしそうに微笑んだ。
「喜んでもらえてうれしいです。……私はやっと気付きました。科学とは人の為に使ってこそのものだと…うふふふふ。あなた達にも私の喜びを伝えてくて…やっとそれに気づく事ができました。感謝します。」
額を少女に合わせるよう水槽へつける。こつんっと軽い音。
「そうそう…ちゃんと男の人達も用意しています……学生ではなく…大人の人です、きっと上手だと思いますよ?」
薄暗い部屋内に甘い香りを漂わせて、こぽこぽとフラスコが蒸気を吐き出している。耳に響く心地よい煮沸音。静寂の中にわずかに聞こえる機器の稼動音と少女達の吐息。機器の明滅に照らされる千里の顔には、抑えきれない…発情した女の貌が覗いている。
「そうそう…これですが」
熱に踊るフラスコ内の液体は、たくやから抽出したものだ。
「フェロモンなんて生易しいものではありません…、強力な興奮物質…自分も相手も強制的に発情させる強力な媚薬ですね。よく相原先輩は普通でいられるものです…」
ロッカー一列に並ぶ【T】とラベル表記された薬品群を前に千里が微笑む。
「たくさん用意しました。皆で楽しめるように……場所も押さえています。校長先生に体育館を開放してくれるようお願いしました。相原先輩との現場写真を見せれば喜んで協力してくれましたよ。まぁ、校長含め何人かの教師も参加するのが条件でした…しかもタダで」
そこだけは計算外です…と千里が呟く。
「まぁ、他の参加者達はいつもの5割増しの寄付に承諾してくれたのでよしとしましょう♪」
時計を見るともうこんな時間だ。そろそろ皆に起きてもらわないと……主賓がお客様を待たせては悪い。
「うふふふ♪」
快楽への期待、そして喜びに震える身体を抱き締め千里は微笑む。
自分の発明で人を幸せにできる…そして自分も気持ち良くなれる、しかも研究のデータも取れて資金も稼げる。なんと素晴らしいことだろうか?
サバトの始まりに―――魔女はローブをひらひらと揺らし、笑う。
美由紀編 ―ストレイシープー その1へ