33・夏の暑さで暴走してます・その4−1
カラオケのタダ券が手に入ったから、一緒に行かないか?……あくまで友達として。
日曜日に遊びに誘うなら別段変わったところのない普通の流れだ。ただまあ……先日、どうもバスの中で胸とかお尻を触ってしまったらしく、かなり怒らせた上に水着まで奢らされた相原を誘うのでなければの話だけれど。
悪いと思ってるわけじゃないんだからね!―――とツンデレ風に自己主張しても意味はない。なんと言うか、このまま怒らせたまま夏休みに入るのも嫌な感じだし、それに……い、いやなにもやましいことは考えてない。相原は今、外見とか身体構造的に女になってるけど本当は男なんだって解ってる。そう、俺と遊びに行っても男二人。なんか寂しい青春であることになんら変わりはないはずなのだ!
そんな力説しなくてもいいようなことを炎天下の下で拳を握って考えながら、俺は陽炎が立ちそうなぐらいに暑い道路を相原の家に向かって歩いていた。
理由は単純。相原のヤツ、いくら携帯に電話をかけても出やがらないのだ。だからこうして何度か遊びに行ったことのある相原の自宅まで汗をたらしながら向かっているのだ。
―――いや、ここで相手の都合が悪いとか考えようよ、俺。
いきなり押しかけて、もしも相原のヤツが隣に住んでる片桐とラブラブ中だったりしたらどうするんだ。恋人以内暦生まれてからずっとの俺は、はっきり言ってそれだけで死ねるんだぞ!?
相原は男だったとき、何度も友情より恋人を選んで「リア充め…!」と罵り謗られたヤツだ。事前に連絡を取れないまま会いに行く……相原の家に一歩、また一歩と近づくたびに湧き上がる不安に押しつぶされそうになるが、
「ふ〜んふ〜んふっふふ〜んふ〜〜〜ん♪」
汗だくで辿り着いた相原家の塀の向こうから、なにやら楽しげな相原の鼻歌が聞こえてきた。
なんだ、庭にいたから携帯に出なかったんだな……それが解り、どういうわけか胸を撫で下ろした俺は早速相原に呼びかけようと背伸びをして、腕を振り上げ、口を開き―――
「あれ? なんか誰かいたような……ま、いっか」
とっさに口を塞いでその場にしゃがみ込み、相原の視線から身を隠してしまっていた。
てか……何で庭先でTシャツ一枚なんだ、あいつは!?
俺の目にした相原の格好は、サンダルに白Tシャツのみ。まるでスカートのように足の付け根を覆い隠す大き目のシャツは男物なのだろうが……幸いにもこちらに背中が向けられていたおかげで間一髪発見されずにすんだけれど、あれほどまるまるとたわわに膨らんでいながら重力に従うことなくキュッと引き締まったヒップライン、それは絶妙すぎるほどに扇情的で俺の煩悩にグサッと突き刺さってくる。
相原の家の庭が塀に囲まれているので安心して健康的な太股やヒップラインを惜しげもなくさらしているのだろうけれど……その格好で何をしていたかと言えば、ホースを手にして、ジョボジョボと水を注ぎいれていた。
―――子供用のビニールプールに……だ。
もしやそれに布団などを放り込んで、足で踏んで洗うのだろうか……いや、むしろ、最近逞しくなりすぎた俺の妄想は、あまりにも当然の光景を頭の中に描き出し、暑さにやられて理性の効かなくなっている股間を一気に膨張させてしまう。
だけど、あるわけない、そんなこと。俺も相原もいい歳なのだ。まさかビニールプールで……などと自分の考えを否定しようとしていると、
「よっし、このぐらいでいいかな。んじゃ泳ぐぞ―――!!!」
そこからの俺の行動は迅速だった。すかさず相原家の正門に回り、鍵のかかっていなかった門を音も立てずに開けて忍び込み、忍者顔負けの忍び走りでカサコソと二話を覗き見できる位置にまで走り寄る。
そして―――俺はそこで桃源郷を見てしまった。
「ん〜〜〜! きっもちイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
Tシャツを一息に捲り上げた相原の身体は、先日俺が買ってやった新品のビキニに包み込まれていた。本当は男だと解っていながらクラスメイトどころが学園中の男子から注目を浴びるほどに相原はスタイル抜群なのだが、それは決して胸やお尻が大きいからと言うわけではない。胸から下腹部へと続くウエストの曲線美もまた、一切の贅肉がなく細くくびれている。
その見事なウエストラインがあるからこそ、バストやヒップのボリュームが一段と際立って見える。昨日、相原に「どれがいい?」と聞かれたから赤面しながらも選んだビキニは、今、まるで子供のようにビニールプールにダイブした相原の肢体をしっかりと支え、包み隠している……が、包み隠すだけには飽き足らずに、寄せて、上げて、その上で水をたっぷり吸って相原の大切な場所にぴったりと吸い付いているのだ。
………これで、興奮するな、ツバを飲むな、勃たせるなと言うのが無理すぎる話だ。
「プールもいいけど、やっぱり誰にも見られずにのんびり出来るのがいいよね〜……♪」
すまん、俺が見てる……と心の中で告げると、正直者へのご褒美か、相原は美脚で水面をパシャパシャ蹴り上げるのをやめ、くるりと身体を回してプールの中で仰向けになる。豊満なバスとはその先端を“チャポン”と水面につけ、代わりにビキニが少しだけ食い込んでいるヒップがヒョウタン島のように水中から浮かび上がる。肉感的で、それでいて弛んだところの一切ないお尻……相原が本当は男でさえなければ、ほお擦りをしてかぶり付いてしまいたい白桃のようなお尻に俺はゴクリとツバを飲み込むと、目眩すら引き起こしそうな興奮に包まれながら、自分の股間を力強く握り締めていた。
解ってる……何度も自分に言い聞かせなくたって解ってる。相原は男で、恋人までいて、それで……お、俺には不釣合いなぐらいに美人で………て、最後のはなんだ。俺は、俺は、相原のことなんて毎晩イヤらしい夢を見るぐらいで何も変な感情なんて抱いていない! そうだ、俺とヤツは親友で、それ以上の関係なんてないんだからな!!!
だからズボンの上から股間を握ってるのだって、押さえつけようとしているからなんだ。扱いてなんかいない。相原がどんなにエロくたって、あのプールの中に飛び込んで身体を絡ませあいたくたって、俺は……絶対にノーマルなんだ。だから相原にイヤらしい感情を抱いているはずがない。
そう―――あの言葉を聞くまでは。
「最近ずっと暑かったからな〜♪ ん〜……せっかくだし“あいつ”も呼んじゃおっかな? 新しい水着も見せたいし」
“あいつ”って誰よォ―――――――――――――――!!?
新しく買った水着を見せるような相手。
ビニールプールで少女のようにはしゃいでいるところに呼ぶような相手。
それはまさか“彼氏”とかじゃないよな? “彼女”の片桐のことだよな? お…俺以外の、別の、誰か、だよな?
ビニールプールの肘に腕をかけ、濡れた髪をいじりながら何かを考えるような表情を見せる相原。それを見つめる俺の目には、真夏の日差しが降り注いでいるはずなのに周囲が真っ暗になったように思えていた。
一人ではギリギリ十分でも、二人には狭すぎるビニールプール……頭の中ではそこに、相原とは別にもう一人男の影がある。
水着姿の相原が犯されている。俺が買ってやった水着の上から乳房を揉みしだき、唇を吸い合いながらバシャバシャ水を跳ね上げ腰を振り……はっきり言ってAVの見すぎだ。現実に相原は犯されてなんかいない。けれどうつ伏せの相原の知りに太くて長いペ○スが捻じ込まれている錯覚は目の前から消えず、相原が仰向けになれば正上位に体位を変えてズコズコと激しくハメ合う光景が頭の中で延々と繰り返され続ける。
「それにしてもアッツいな〜……水があっという間にぬるくなってきちゃう」
あ、ああ……頭の中が熱い。ノドがカラカラに乾くぐらい熱い。あ…相原が他のヤツとSEXしてるところを騒々しすぎて……気が狂いそうなぐらいに熱くなってる。
「なっ……!? あ、あんた、いつからそこにィ!!?」
気がつくと、俺は立ち上がって相原の目の前に姿をさらしていた……が、そんな事はもうどうでもいい。
熱い、頭の中が熱いんだ、もう服なんて着ていられないぐらいに全身が熱いんだ……
「な、何でズボン脱ぐの!? やだ、このバカ、あ〜んも〜〜〜、人んちの庭で名にやってんのよォ!!!」
水を蹴立てて相原がビニールプールから立ち上がる。けど……その表紙に、水着のブラの肩紐が、俺の目の前ではらりと解けた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!
そこからプツンと記憶が途切れる。たぶん理由は……貧血と熱中症だ。
相原のオッパイ、破壊力ありすぎるぜ……グフッ……
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