その1C
「…なんで、あやまらなくちゃいけないんだよ」帰り道、とぼとぼ歩きながら鈴木が呟く。
「俺達が一方的に悪いみたいにさ。別に脅してあんな事してたわけじゃないだろ」
「…仕方ないだろ。あの熱血漢怒らしたら俺達、下手すりゃ退学だぜ」三人の中でリーダー格の佐藤が云う。
「とりあえず、あやまっとけばいいんだよ。素直に帰してくれたじゃねぇか」
「でもさぁ…」不満そうな鈴木。
「しかし、普段はのほほ〜んとしてるのに、妙に熱くなってたな、宮村の奴」
「やっぱ教師だからかな」「それだけかな…なんかたくやちゃんを見る目が熱かったような」「なんだ?あい
つも気があるのか!だったら仲間に入ってくればよかったのにな!5Pっていうのも面白いかもよ」
「きゃはは。そんなの絶対男が余るじゃねえかよ」「あははは」
二人は笑っているが目は笑っていない。どこかやりきれなさを感じ…その時、それまで黙っていた三人の中で
比較的おとなしい田中が口を開いた。
「あのさ…あの時…」「なんだよ?田中」
「うん。二人がたくやちゃんの前と後ろに繋がってたじゃない?」
「ああ、それが?」
「その時、僕休んでたんだけどさ。扉の向こうに誰か立ってたんだよね」
「?!」「何?」二人が田中に顔を寄せる。
「誰が?」「わかんない。けど、先生かと思ってみんなに言おうと思ったんだ。けど扉の向こうの人影はずっ
とそこに立ったまんまなんだよね。で、僕試しに、たくやちゃんに近づいてキスしたんだ。でも、中に入って
こなかった…だから先生じゃないと思ってそのまま続けたんだ」
「…」二人共、田中の話を熱心に聞いている。
「で、結局みんなイって終わったじゃない?そしたらすぐに宮村先生が入って来たんだ…僕思うんだけど、
あれ覗いてたの絶対先生だよ」
「何ぃ?」鈴木が叫ぶ。「あの野郎!俺達に散々文句いっておいて自分も興奮してたんじゃねえかよ!」
「まぁまぁ…落ちつけよ、鈴木。結局あいつも“男”だったってことじゃないか」
「でもさぁ」
「まぁ聞け。面白くなってきたじゃないか。たくやちゃんとも今日までか、と思ったけど…なんとかなるんじゃ
ないか」
「え?」「何、なんだよ?」今度は佐藤を二人が囲む。
「まぁなんとなく作戦が浮かんだんだが…よし、家来いよ。じっくり作戦を練ろうぜ」
「おう!」「…うん」
こうして三人は佐藤の家で作戦を練り始めたのだった。
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