第三話 笹川美奈子編
今年の4月に女子高へ入学したばかりの一年生で、運動は
苦手だが、がんばり屋の16歳である。
第一関門のつり橋渡りをなんとかクリアし、次のステージ
へ向かう私。生き残っているのは、155人。第一関門でほとん
どの女の子がプレッシャーに敗れ去り、プールの上に吊るさ
れてしまっている。つり橋のステージから、プールの上にか
かった通路を歩き、次のステージに到着した。そして、ゲー
ムの説明が始まった。「みなさん、第1関門通過おめでとう
ございます。バランス感覚ゲームの難関をよくクリアされま
した。この第2関門は、体力勝負です。名付けて『水上ぶら
下がりサバイバル』です」すると、プールサイドのクレーン
が動き出し、155本の鉄棒が降りてきた。「それでは、みなさ
ん、好きな場所についてください。」一斉に全員が鉄棒を握
り、スタンバイした。155人が一斉に鉄棒にぶら下がるとい
う、壮大なゲームである。「では、第一ステージは一分間の
『鉄棒ぶらさがり』です。ゲームスタート!!」そう言う
と、クレーンがゆっくりと上昇を始め、足場が離れていく。
足場がプールサイドに引き込まれると、その下には深さ5m
の飛び込み用プールが広がっていた。まだクレーンは昇って
いく。高さは水面から6mはあり、相当な高さである。私
は、体力には自信は無かったが、根性で最後まで残って見せ
ると誓った。35度を超える炎天下の中、このゲームは予想以
上につらいチャレンジだった。150人の女の子が、水着で苦し
そうな表情を浮かべているのを見ながら、観客はシャッター
を切っていた。30秒経過、隣の黄色いビキニを着た私と同じ
年くらいの女の子が、急に泣き出した。「あ、あたし、もう
ダメ。落ちちゃう。」「あきらめちゃダメよ、最後までがん
ばろ。落ちちゃダメ。」色白の、綺麗というよりかわいらし
い小さな女の子であった。彼女は足を小刻みに震わせ、内股
にして耐え続けている。細い腕は、今にも鉄棒から離れてし
まいそうなほど震えていた。・「まだ終わらないの?あたし
もう、本当にダメ・・・」そう聞こえたかと思った瞬間、突
然「ズルッ」「きゃあああああああああぁ!!」ザパアアア
アアン!ああ、ダメだった。彼女は力尽き、大きな水しぶき
とともに消えてしまった。彼女のぶら下がっていた鉄棒がむ
なしく揺れていた。すると、プールサイドから例のサメダイ
バーが飛び込み、彼女を捕まえ、ロープを取り付けている。
ザバッ!彼女は水着が溶け、プールから引き上げられたが、
手首だけ縛られあがってきた。クレーンにより、彼女はプー
ルサイドから少し離れた場所へ運ばれ、ゆっくりと下ろされ
る。その下には、なんとピラミッドが墓標のように並んでい
る。彼女は恥部が頂点に下ろされ、放置された。その直後、
「イヤアアア、ハウっ」と奇妙な悲鳴をあげた。ピラミッド
は巨大なバイブになっており、全体重をかけてその衝撃は伝
えられる。「はあ、はあ、」そして彼女はうなだれ、ピクピ
クさせながら静かになった。彼女の生き残りモニターがGA
MEOVER画面に変わり、ピラミッド下部から撮影された
LIVE映像に切り替わる。その間にも、プールへと力尽き
ていく女の子が水しぶきを上げていた。
−−−1分経過−−− 私達は、ゆっくりと足場へと着地し
た。「それでは、30秒後、第2ステージがスタートしま
す。」え?まだ終わりじゃなかったの?私はピンク色のビキ
ニを気にしながら、呼吸を整え、ハイソックスを伸ばし、次
のステージに備えた。「次のステージは、15回の『水上斜め
けんすい』です。」突然、足場が上昇し、さっきの鉄棒が胸
の部分にきたところで停止した。これで水上7mの高さにな
った。「では、みなさん、鉄棒に手をかけてくださいね。」
全員が一斉に鉄棒を握り締める。鉄棒が移動し、斜め懸垂の
姿勢へと自然にスタンバイされる。「みなさん、ホイッスル
に合わせて懸垂してください。もし遅れると、鉄棒のロープ
が切れて、プールへまっさかさまですよ。ゲームスター
ト!」ピッ!そして、全員が懸垂を始める。15回とはいえ、
鉄棒ぶらさがりの直後の懸垂は、腕に異常なほどの負担がか
かる。一回目から早くも5人ほどの女の子が悲鳴をあげ、プー
ルへ脱落してしまった。ピッ!ピッ!ホイッスルが鳴るごと
に、一人、また一人とプールへと消えていく。あと2回、あと
1回、動いて!早く!腕が動かないよ!しかし、私は最後の力
を振り絞ってぎりぎりのところで生き残った。「はい、お疲
れ様です。最後のステージまで1分休んでください。」汗ばん
だ体をゆっくりと休ませる、わずかな休息の時。周りを見る
と、誰もいない鉄棒が既に50本はある。これで半分の女の子
が力尽き戦いに敗れ、水中へと落ちてしまった事になる。
「それでは、第2関門の最終ステージです。皆さん、その場に
仰向けで寝てください」言うとおりに、残った100人が仰向け
になる。「上から丸太が降りてきますので、これにしがみつ
いてください。『丸太抱きつきサバイバル』です。時間は2分
です。」なんと、ここにきて2分という過酷なゲームとなって
しまった。「丸太は太さが前と後ろで違いますので、好きな
方法でしがみついてください。」私は身長が158センチと低い
為、足を細いほうに、手を太いほうに持ってきた。しかし、
これが最大の命取りとなってしまう。「ゲームスタート!」
鈍いクレーンの音とともに、丸太は上がっていく。下は見え
ないが、おそらく水面から8mはあるだろう。飛び込み台の
最上段から飛び降りるようなものである。水上にきた瞬間、
腕に予想以上の負担があることに気付いた。丸太の太い部分
の重さで、頭が下にきてしまった。足はしっかりとつかんで
いるのだが、腕は完全にグリップできていない。1分経過。何
人かの悲鳴が聞こえたが、それどころではなかった。汗が胸
を伝っていく。足がしびれてきた。腕も限界に近い。少し状
態を直そうとした瞬間、腕が急激に滑ってしまった。体から
丸太が離れ、足と手のひらだけで踏ん張る格好となった。水
着のしたに目を向けると、汗ですっかり弱くなってしまって
いた。と思った瞬間、ビキニの横の紐が切れ、おしりが見え
てしまった。必死で丸太に戻ろうとするが、既に時は遅く、
徐々に体力は奪われていた。あと45秒、もうダメ・・・・そ
う思ったと同時に、手は丸太から離れ、足だけでぶら下がっ
ていた。ビキニの下は完全に体から離れ、8m下へと落ちて
いった。そして、私の足もハイソックスにより滑り、体は中
へと舞った。頭からプールへ急降下していく。「キャアアア
アアアア!!」落ちていく瞬間、私は恐怖と残念な思いで涙
が出てきた。バシャアアアアァァァン!沈黙の水中で、ダイ
バーに手首を結ばれる。こんなところで負けるなんて・・・
気がつくと、ピラミッドの上で涙を流している私がいた。快
楽と激痛の中、私の戦いは・・敗北・・そして・・・倒れた
女の子達と・・・眠りについた・・・・・GAMEOVER
「はい、おめでとうございます。クリアです。」疲れたよ
う・・・周りを見ると、そこには丸太のほとんどが無人でむ
なしくゆれていた。残り人数はわずか61人。絶対に生き残っ
て見せるわ!藤沢美紀17歳の少女の物語が始まる・・・
(続)
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