第9話


「ほら、立ち合いだから」 女性はそう言います。 私は仕方なく、真ん中のスペースで、チビザルと言われる子と向かい合いまし た。 タオルは十分に大きいのですが、気を抜くとお尻が見えそうで、私は周りの視 線を意識しながら、胸と腰にタオルを当てています。 「いい? ルールは簡単。倒されたら負けだから。壁についても大丈夫よ」 「モンゴル相撲の要領ね」 そう言われても、私自身相撲自体ほとんど知りません。 でも、倒されなければいいんだ…。 私はその子をあらためて見ました。 彼なら私より小さいし、勝てるかもしれない…。 さっき色々と触られた仕返しだって、してやることができるかもしれない…。 私はそう思うと、急に気持ちがムカムカとしてきました。 そうだ。絶対にやり返してやる。 そう思ったときです。 「じゃ、シコ踏んで」 「は?」 「シコ知らないの?」 私には意味が分かりません。 すると目の前の彼が、大きく足を振り上げました。 チビザルの彼はハンドタオルを巻いていますが、ハンドタオルもあまり大きく ないので、ギリギリあれが隠れている状態でした。 もちろんただでさえそんな状態でしたので、タオルがめくり上がって彼のおち んちんがぷるっと見えました。 「や、やだっ!」 私はあわてて目をそらします。 「はぁ? 何やってんの? 真剣勝負なのに目そらすんじゃないよ」 女性は私に言いました。 「その間に倒されるかもしれないでしょ?」 「負けたら、この情けない男と一緒に、想像もつかないくらい恥ずかしい罰ゲー ムやらせるよ?」 私はあわてて、チビザルの方を見ました。 彼は私の視線に気がついたのか、ニヤニヤしながら、さっきよりも大きく足を 振り上げました。 モロです。 毛は少しだけ生えていて、3センチくらいの長さでした。 色はすこしだけ浅黒く、皮がかぶっていましたが、先っぽがほんのすこしだけ 顔を出していました。 普通ならかわいいとか思うのかもしれませんが、先ほどあんなことをされた男 のモノです。 私は見ているだけで、ちょっとした吐き気を催してきました。 「わははは!」 「やるー!」 「ちっちぇえモン、見せつけるなよー!」 その彼の行動を見て、周りから大きな笑い声が湧いてきました。 「さ、あなたもやるのよ」 「は?」 「シコ踏まないと、相撲できないでしょ?」 私が、あれを。 私はあらためて自分の格好を見ます。 タオルはほとんどお尻のすぐ下。 少しでも足を振り上げたら、すぐにお尻が見えてしまいます。 いえ、それどころではないでしょう。 「やるんだよ?」 女性は私のことを見つめながら、すごみを効かした声で言いました。 私は仕方なく、見よう見まねで手を膝に当てると、左足を軽くあげました。 その瞬間です。 たくさんの中学生たちが、私の足下にかがんで、見上げてきました。 「キャーッ!」 私はすぐにタオルを押さえます。 「なめてんの?」 「え…?」 女性はさらにドスの効いた声で言いました。 「全裸でやってもらってもいいんだよ?」 「やるんだろ?」 「は、はい…」 私はあらためて、足を上げようとしました。 すると女性の一人が、私の真横にしゃがみ込みました。 「私の頭より、高くあげなよ」 もう、仕方ありません。 私は覚悟を決めて、足を大きく振り上げました。 でも、無理です。 足はその女性の頭と同じくらいにまでしかあげられません。 「うおー! ケツ丸出しー!」 「いやこっちから、毛まで見えてるぜー!」 中学生たちが大声で言います。 タオルはまくれあがって、後ろからは丸見えになっていました。 もちろんヘアも見えている状態です。 「ねぇみんな、来てごらんー?」 女性は学生たちを呼び寄せました。 そして自分と同じように、私の真横でしゃがませました。 「この子の足、私の頭より高くあがってるー?」 「あがってないでーす!」 全員が連呼します。 「シーコ! シーコ!」 「あげないと、殺すよ?」 私は、また涙が出てきました。 そしてその足を、さらに大きく振り上げました。 頭より、10センチほどの高い位置。水平線よりもずっと高く、私は足を上げま した。 「………………………」 大声が上がると思いました。 しかし彼らは、目を丸くして、ただ無言で私のアソコを見つめていました。 女性はニヤニヤしながら、彼らの反応を楽しんでいました。 「…どう?」 その言葉にハッとしたかのように、彼らは反応します。 「す…」 「すげー!」 「ピンクだー!」 「穴なんかどこにあるんだよ!」 「トイレの落書きのあのマーク、全然違うじゃねーか!」 「うおー! マジ見ちゃったー! キモー!」 「なんか出てるぜー!」 最後の言葉に、私はビクッと体を震わせます。 「足、落とすんじゃないよ?」 私の心を読んだかのように、女性から言葉が放たれます。 私は恥ずかしさで泣きながら、目を閉じて、ただ足をその位置に固定していま した。 「この出てるのはね、小陰唇っていって、普通なのよ」 「へぇ…」 「でもこの子のはね、普通の人よりも小さいかしら…」 「本当にムカつくよね…。ちょっと伸ばしてやろうか?」 びくん。 私は体を震わせます。しかし、足をおろすことはできませんでした。 「冗談よ」 そして女性は、私の小陰唇を、指ではじきました。 「うっ!」 私は痛みに耐えます。 「揺れたー!」 「すげー!」 他の子たちは、大声を上げました。 彼らは目をギラギラさせながら、私の横で騒いでいます。 「おい! 押すなよー!」 あまりにたくさんの人間が集まってきたので、ぎゅうぎゅう詰めになってきま した。 「あ、あわてないでよ、僕たち…」 するとにこやかに、その女性が言いました。 「シコって、逆にもするんだから…」 その言葉を聞いた瞬間、彼らのうち位置的に見えない子たちが、すぐに反対側 に同じように陣取りました。 「さ、今度は右足だよ」 私はその言葉に従うしか、ありません。 左足をおろすと、同じように右足も、水平線よりたかく、あげました。 「おー!」 そちらからも、同じように大歓声が上がりました。 「こっちからだと、また見え方が違うんだなー!」 「すっげえ…。母ちゃんのよりも綺麗だ…」 「なんで見たことあるんだよ!」 「いや、たまたま…」 そんなやりとりがなされていましたが、私はほとんど耳に入っていませんでし た。 ただこの屈辱の時間が早く終わることを、ひたすら願っていました。 (つづく)


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