第3話
今、私たち二人は、全裸で露天風呂の中に入っています。
タオル一枚すら持たせてもらっていません。
周囲の男性や女性は、全員がタオル巻きです。
最初に私たちが水着を着ていたときと、まさに立場が逆転していました。
そういえば、昔捕虜を拷問するときに、まず服を脱がしたそうです。
人は裸にされることで戦意を喪失してしまうからだ、と聞きました。
そのときの私たちも、ちょうどそんな状態でした。
楽しかった温泉は、まさに恐怖の場所でした。
温泉のお湯は、座ってもちょうど肩まで。
私は両手で抱え込むように丸まって湯船につかっています。
周囲の男性からの視線が、後ろに突き刺さります。
目の前では、彼が必死に謝っていました。
「すみませんでした!」
そんなときです。
ヤクザの男性たちが、先ほどのセリフを言ったのです。
「それで謝ってるのか?」
「土下座しろや、土下座!」
「オラ!」
そして彼は温泉から左右のワキを抱えてつかみ出されました。
「ギャー! ちっちぇー!」
「笑えるー!」
女性たちが、大声ではやし立てます。
実際に彼のは恐怖からか縮こまっており、皮をかぶっていました。
そのまま彼は温泉のフチで手を離されました。
兄貴分の男性は、そのとき温泉のフチのベンチに座り、腰にタオルを置き、う
ちわで自分をあおいでいました。
「オラ、早くしろよ!」
子分の人の言葉に、彼はふるえながら従います。
膝をつき、手をつき、全裸で土下座しました。
「すみませんでした…」
彼は涙を流していました。
土下座ですので、当然温泉の方には彼の後ろがわが向いています。
私は彼のそんな姿を、ただ呆然と見つめていました。
女性たちは彼を見つめながら、また大きく笑い出しました。
「ねー、このコには何してもらおうか?」
「そうだよねー」
「やっぱ並んで土下座させる?」
私はその言葉に、また泣いてしまいました。
「いやです…。いやです…」
すると兄貴分の男性が、彼の顔に足をかけながら言いました。
「まぁ、そこまでワシも鬼じゃないからなぁ」
そしてしばらく考えると、にこやかに言いました。
「まぁ、ワシの背中でも流してもらおうか」
すると彼は女性たちに小さくいいくるめると、近くにある洗い場に行きました。
彼女たちはニヤニヤして私の方を見ました。
「はい」
彼女がくれたのは、白くて小さなハンドタオルでした。
「優しいでしょ? この人」
私はしばらくそれを見て固まります。
それだけで湯船から出ろと言うことなのでしょう。でも、これでは何も隠せま
せん。
「ほら、早く」
「かわりに全裸で土下座する?」
私には選択の余地はありません。
そのハンドタオルを前に当てようか、腰でしばろうか迷いました。
しかし前に当てるのでは、全員にお尻が見えてしまいます。
その上、野次馬たちは携帯カメラを持って私のことをニヤニヤしながら見てい
ます。
それだけはできませんでした。
しかたなく私はタオルを湯船の中で腰で縛ります。
そして手で胸を隠しながらフチに上がろうとしました。
すると、周囲から歓声があがります。同時にたくさんのシャッターの音が聞こ
えました。
後ろを見ると男性たちが私のすぐ後ろに着て、湯船の中からあがるところをじっ
と見てました。
「おー! ケツ見えた!」
「今ちらっとピンクのも見えたぜー!?」
「や、やだっ!」
私は急いで上がります。
その瞬間、タオルが余分な水を吸っていたからか、重みで下に落ちてしまいま
した。
「ひゃっ!」
「オーーーー!」
周囲から大歓声と共にシャッターが着られます。
「ヘア、丸見えー!」
「ケツ、いいよなぁー!」
「おっぱい、ぶるるーん!」
全員が卑猥なことを言います。
私はあわててタオルを広い、すぐに腰でまき直しました。
しかし水で重く、なかなか巻き付けられません。
その間も容赦なくシャッターは切られます。当然ですが、胸は隠せません。
「揺れる揺れる!」
「大サービスだね、お姉さん!」
私は何とか巻き、すぐに胸をかくし、そして兄貴分の男性の近くに急いでいき
ました。
「さ、背中洗ってくれや」
私はその後ろに腰掛けます。腰にタオル一枚、胸を手で隠したままです。
このままなら、何とか洗える…。それで許してもらおう…。
そう思いながら、女性に言いました。
「洗うタオル、ください」
「は?」
「そこにあるじゃん」
「何いってんの、こいつ?」
時間が止まります。
「おら、早くしろよ!」
「この男、湯船の底に沈めてもいいんだよ?」
そして女性は、土下座している彼の股間を、後ろから蹴り上げました。
「ギャアっ!」
声にならない声を発しながら、彼はそのままの体勢で耐えました。
もう、選択の余地はありませんでした。
(つづく)
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