第一章「転性」05


「―――ほほう、それではあなたが古の魔王様なのですか」 『ハ〜ッハッハッハ、ま、隠しても分かるから今言っちゃうけどね〜〜。ふっふ〜ん、尊敬してもかまわんぞい』 「いや〜、長生きはするものですな。ところで魔王様? たくや殿がお飲みになったボトルの値段なのですが」 『ああ、そんなものはツケじゃツケじゃ。できればワシは裸のねーちゃんのストリップショーが見たいぞ〜〜』 「残念ながら今は旅の途中でしての。この隊商には今は男しかおりませぬ」 『ちっ、つまらんのう』 「しかし街まで戻ればよりどりみどり。ワシの店ならば下はまだ男を知らぬ幼女から上は男に飢えた人妻まで」 『ようじょ? ひとづま? ………人間とは同じ種族のメスですら他人に差し出そうというのか!? ああ、人 間種族とはなんと嘆かわしい!! ――で、当然ムチムチのボインボインでエロエロな女はおるんじゃろうな?』 「ええもう、それはもう。まさに…(ひそひそひそ)…の、…(ぼそぼそぼそ)…で、…(ごにょごにょごにょ)…な のがお待ちいたしておりますぞ」 『な…なんと……よもやそこまで……』 「おきにめしませなんだか? ではこの話はここまでに――」 『待てぇい! 貴様、ここまでワシの心のチ○チンを昂ぶらせておいて寸止めかい!?』 「ではドリンク量を払っていただけませんかな。もしくは過去の魔法の一文でもかまいませんが……」 『なんじゃ。そんなものが読みたいのか? ほれほれ、いくらでも見せるからねーちゃん呼んでくれ、巨乳のね ーちゃん!!』 「それは街についてのお楽しみで。まず先にお代を――」 『おっぱいね―――ちゃ―――――ん!! ワシと一緒にあそぼ―よ――!!』  ………いったいあっちの二人は何をやってんだか。  馬車の後部扉の側にもう一つ小さな卓を出してもらい、少し日がたって固くなったパンに肉と野菜がいっぱい 入ったスープ――森のそばだし、お肉の出所はあえて聞かないけど――を食べるあたしの視線は車内中央のテー ブルで何事か交渉――というより、なんだあれは? 台詞だけ聞いてれば似たもの爺さんがごちゃごちゃ言い合 ってるようにしか聞こえないんだけど?  できればあいつの事は放っておいて欲しかった。あたしの唯一の所持品であり、外でワーギャー喚くのを聞か れて紹介しないわけにはいかなくなった魔王の本の事なんだけど、とりあえず混乱を避けるために隊長の梅さん にだけ、アイハラン村での出来事やあたしの体の事もいっしょに説明をした。  が、それが悪かった。まだまだ道具屋として未熟なあたしが見ても分かるほど金儲けの話を前にした商人の顔 をした梅さんは、あたしが飲んじゃったジュースの2000ゴールドの話をきっかけにして魔王の本から色々と 話を聞き出そうとしていた。  もし今のものよりも優れているといわれている古代魔法の知識の一端を聞き出す事ができれば、この老商人な ら国や研究機関相手に何万ゴールドと儲ける事ができるだろう。例えそれがさっきから話にあがっている「湯の みをひっくり返してもお茶がこぼれない魔法」だとか「呪文を唱えれば背中の痒みがピタッと収まる魔法」とかで もだ。  一方、論戦にかけては魔王の本の方も負けてはいない。こっちはほとんど本能なんだろうけど…梅さんの誘導 と要求をスケベ魂だけでことごとく躱しさっている。例え街で女性を紹介すると言っても、この場にいなければ あのスケベ本の事だ、何かを教えるなんて自分の得にならない事を絶対にするはずがない。この馬車に入るまで にぱっと見た限りでは傭兵達にも商人の中にも女の人は見当たらなかったし、この話し合いは延々と長引きそう な雰囲気だ。  その間、お腹が空いていたあたしは本としのぎを削っていた梅さんに「梅さんの分も食べていい?」「かまわん、 今大事なところなんじゃから話しかけるな。それでですな――」と断ってから、ちゃっかりもう一食分のパンと スープも食べてしまっていた。  昔は似たような手で姉さんにご飯を奪われてたっけ。……これが明日香やおばさんだったらうまく行かないん だけどね。  ともあれ、味も量も満足なものだったスープを綺麗に平らげたときには天窓から見える空はすっかり暗くなっ ていた。天井には外の暗さに合わせて光量を調整する魔法のランプが吊るされていて気がつかなかったけれど馬 車の周囲には夜の帳が降りていて、室温も昼間に比べれば少しばかり冷え始めていた。 「うっ……」  ふと、寒さを意識した途端にあたしの下半身から震えがこみ上げてくる。  ジュースも飲んだしスープも飲んだ。となれば、この下半身の圧迫感は当然――――うわっ、もしかして猛烈 にやばい状況!?  さらっと言っちゃえば催している。おしっこしたい。ああ、意識したらさらに尿意が加速して……あっ…ああ ああああっ!!  なんだか…ちょっぴり我慢できない感じが……もしかしておチ○チンが無くなったから? あれが線になって こんなとき我慢が出来ていたなんて言う仮説を……うっ…はうううっ! こ…これはもう……も…もれ……ああ あっ!! 「あ…あの……梅さん…ちょっとお願いが……」 「ええい、さっきから邪魔をするなというておろうが!!」 『まずは女体盛りじゃあああっ!! できればプチムネで膨らみかけの乳房に薄作りを並べてのう』 「はいはい、それはもうお任せくだされ。それで前金代わりに――」  だ…だめだ。二人ともあたしのことなんてまったく眼中にない。これじゃ断ってから外に出ようと思ったら明 日の朝までかかりそう……って、あっ……!  今は必死に力を入れて押し戻しているけれど、いつのまにか膀胱いっぱいに溜まったおしっこは男性器の分だ け短くなった細い管を押し広げて外に向かい始めている。つまり……男のときよりも時間的猶予はないというこ とだ。  こ…こうなったら緊急事態……くっ…い、急いで外に……  別にこの馬車から出るなと言われているわけじゃないけれど、勝手に外に出るのは気が引けてしまう。そんな 後ろめたさも刻一刻と限界点を越えかかっている事を考えたらどうでも良い事だ。――そう思いながらあたしは 馬車の扉を二人の会話の邪魔にならないよう音を立てずにゆっくり開け、細い隙間から暗い外に身を滑り出させ た。  ―――もうすっかり夜は深けていた。  ここが森に囲まれた場所だからだろうか、神話に登場する怪物を連想させるほど無気味なもののように思える 巨大な影が黒に近い紫色の世界に横たわっている。  それがあたしが迷い込んだ巨大な森と気付くのに数秒の間を必要とした。  けれど、馬車の周囲はそれほど暗くは無い。恐らくは獣除けのためだろう、五台の馬車とその側で夕食後の談 話を楽しんでいる人たちを囲むようにいくつも大きな篝火が焚かれていた。魔法の光ではない、炎の赤く温かな 光は少し離れた森との境界にまで僅かながらではあるが届いていた。  よし、これなら恐くない。――早く済ませて馬車に戻ろっと。  さすがに「今からおしっこ行きます」と声を大にして言うわけにもいかない。いや、だって恥ずかしいし。恐い のは別として、今のあたしが女でも男でも、誰かに用を足すところを見られるのはなんというか……生理的に恥 ずかしい。  そんな理由で苦手な夜闇を我慢してあまり人に会わないように馬車の裏手へと回ったあたしはパチパチと弾け る音をたてて燃える炎の横を通りすぎ、まだ喪失感に慣れない股間を抑えながら一本の木の根元へとやってきて ―――ある重大な事を思い知らされる羽目になってしまった。 「うっ…漏れそ…………………あ…あれ?」  ズボンの腰紐を緩め、右手をトランクスの中に差し込んで……ここまではいつもと同じ…なんだけど、  ………ない。………どうやっておしっこするの?  事ここにいたり、あたしはようやく失念していた事――自分に女の事しての知識がまったく無い事に気がつい た。  思い起こせばあたしが生まれてから今まで、女の子のおしっこの場面に遭遇した事なんて一度もない。まぁ、 道具屋だから村のおじさんに頼まれてエッチな本の一冊や二冊入荷した事はあるけれど、おしっこしているポー ズなんて…… 「………んっ!」  だ…だめぇ……早くしないと…本当に漏れちゃうっ! 「う…うぅ〜〜〜!!」  下半身の圧迫感はますます辛くなる一方。こみ上げる尿意はのたうつ蛇のように股間の奥で暴れまわり、今に も勢いよく小水を迸らせてしまいそうだ。  だけど、ここにはたくさんの人がいる。全員見知らぬ人だからと言って漏らしてしまっていい道理などあるは ずが無い。それにもしそんな事を魔王の黒本や梅さんに知られたら―― 「やっ……そんなの…いやぁ………!」  縛りを緩めてずり落ちそうになるズボンを両手で握り締め、あたしは脂汗を流しながら腰を引いて体をくの字 に曲げて悶え苦しむ。  けれど頭は必死にどうやって女の子はおしっこをするのかを考えていた。幸い、子供の頃からずっと明日香と 一緒に遊んでいたし、その幼なじみが顔を赤くしながら時々森の中に駆け込んでいった記憶がある。  そう…そのときの明日香は――立ちション? 「ち、違う! 明日香がそんな…立ちションって……」  でも考えてみれば、おチ○チンが無くたって女の子のおしっこは前に飛んでいくのかもしれない。指先に触れ たあのヌルッとした口のようなところからチョロチョロチョロって……  だけど女の子にはおチ○チンのようにおしっこの狙いを定めるためのものがついていない。となれば、おしっ こが前に飛ぶとは限らないから―― 「じゃあ…ズボンを全部脱いで……?」  下半身だけ全裸になり、足を開いてしちゃえば濡れたり引っかかったりする事はないはず。だけど…… 「明日香も…そんな格好をしてるのかな……」  女の子のことを考えると自然に思い浮かぶのは、いつもそばにいてくれていた幼なじみの姿……なんだけれど、 今、この時に関してだけは思い浮かべない方が良かったのかもしれない。  あたしが思い浮かべたのは子供の頃の明日香ではなく、最近、幼なじみのあたしの目から見ても日々その美し さが輝きを増しているように思えるぐらいに綺麗な明日香の姿。しかもおしっこをしているところを……下半身 を隠す衣服を全て脱ぎさって、眩しいほどの美脚を左右に開いて木の幹に背を預けて放尿―― 「んっ―――っ!!」  や……あっ……腰が…あっ……くふぅ……!  思わず木に手をつき、そのまま膝から崩れ落ちてしまう。  明日香の肌を…そして恥じらいながらおしっこするところを想像した瞬間、あたしの股間から得体の知れない 震えが這いあがってきた。  乳房の下で胸は苦しくなり、昨日よりも細くなった肩はまだ痙攣の余韻が残り、か細く揺れている。幸いおし っこは漏れなかったようだけれど、おチ○チンのあった場所の根元からさらに奥、臍の裏側にまで達しそうな「 なにか」は今なおよじれ、絞られ、ヒクついて、そのたびにあたしは開いた口からえも言われぬ感覚を体の外に 吐き出すように悩ましい吐息を吐き出した。 「あっ……早く…早くしなくちゃ……」  頭がクラクラし、どこかぼやけている視界を見開いたあたしはそれでもなんとか立ちあがると、おぼつかない 足元のまま木の裏に回りこむように森へ少しだけ踏み込んだ。 「ハァ……あっ……も…限界………んっ…!」  先ほどの感覚がなんなのか……いやらしい想像をするたびに股間に走り抜ける重たく、けれど全身の神経に生 々しく響き渡る感覚にしらず顔が火照ってしまうけれど、手はズボンをずり下ろし、異様な熱を帯びた股間を外 気にさらけ出す。 「くぅ……っ!」  本当に…おしっこが……漏れちゃうぅ……!  もうどうやっておしっこをするかなんて迷っている暇も猶予も残されていない。ただ最初に思いついた通り、 蹴飛ばすように足首からズボンを振り払ったあたしは背後の木に背中からぶつかるように持たれかかると、 「なんだ、誰かいるのかと思って見に来たら随分と面白そうな事をしているじゃないか」 「いっ!? だ、誰かいるの!?」  おしっこが漏れそうで焦っている事もあったけれど、それまで近くに人がいるなんてまったく気付かなかった。  あたしがそれまでおしっこを押しとどめていた股間の力を抜こうとした瞬間、まるでそれを見計らったかのよ うに男の声が突然暗い周囲に響き渡る。 「あっ…ちょ、まって。あたし今――」  恥ずかしい部分をなにもかも晒している下半身を少しでも隠そうと手で覆いながら脱ぎ捨てたズボンとパンツ を探そうとするが、見つけるよりも早く、横手の茂みから背は低めだけれど肩幅の広い――そう、寺田と呼ばれ た傭兵たちのリーダーがその姿をあらわした。 「こっちにこないでっ!」  こんな恥ずかしい姿を誰にも見られたくない。  森の中の暗さならあたしがズボンを脱いでいるのは見えていても、細かいところまでは見えていないはず―― そう思ってそう叫んではみるものの、寺田はその足を止めようとはせずにまっすぐあたしに向かってくる。一度 解放しかけた尿意を再び押し戻すためにギュッと太股を密着させているあたしは逃げるための動きをすぐに起こ す事ができず、結果として寺田が目の前にやってくるまでお尻を木に押し付けたままその場から動く事が出来な かった。  ―――見られてる。  お互いの表情が分かるほど近い距離にまで寄ってきた寺田はすぐに喋り出そうとはせず、ゴリラそのものと言 うような顔に薄ら笑いを浮かべてじっと身をすくめるあたしを見下ろしていた。しかも視線はあたしの顔ではな く、閉じ合わせた太股の付け根に両手を差し込んでなんとか隠している股間へと向いている。 「っ……う……!!」  呼吸さえ圧迫するほどの恥ずかしさに顔を俯かせたあたしはさらに体を小さくするように身をすくめ、ガクガ クと体を震わせた。  様子があまりにもおかしい。寺田はあたしがおしっこをしようとしている現場に居合わせたのに、それをなじ るでもなく、それを気遣う様子も無く、目の前に立つ巨漢に怯えるあたしの様子にニヤニヤしながら、おチ○チ ンがなくなって縦に一本の筋のようなものがあるだけとなったあたしの股間に視線を突き立てる。  み…見ないでよぉ……こんなの…恥ずかしすぎるよぉ……  野犬に斧を投げつけたときとは別の――いや、あの時からあたしを見る目には同じような輝きがあったのかも しれない。  寺田の視線は明らかに「女」を見るものだった。目の前にいるあたしは、自分でも見惚れてしまうほどの美貌と、 力も無くてただ震えるだけの、か弱い女でしかないのだ。  けど、あたしが男だって言えば……………どうせ信じてもらえないか。  あたしの体に男だった事を示すものなど一つもない。おチ○チンは当然なくなっているし、胸は大きく膨らみ 先端を尖らせ、ウエストからヒップへは揉めば心地よい感触を返すほどに肉付きが良くなっている。  もしそんな女の子が暗い森の中で、下半身の肌を晒していれば……あたしなら顔が赤くなってしどろもどろに なるだろうけれど、この寺田なら―― 「くっ――そんな格好をして、一体何をするつもりだったんだ? さっき、あの爺さんに裸を見られて体が火照 って我慢できなくなったか?」 「あの…あたしはただ…その………おしっこ…を………」  あたしのこの格好を説明しなければこの状況は変わらない。――そう思い、自分の恥ずかしい行動を喋る事を 拒もうとする口を必死に動かすけれど、それを聞いた寺田はクッと無気味な笑いを漏らすと、 「そんなわけがあるか。下手な嘘をつくんじゃない」 「ほ、本当よ! あ…あたしは…本当におしっこに……」  一瞬だけ声を荒げはしたけれど、用を足しにきたことを自ら強調した事に気付き、再び口をつぐんで俯いてし まう。 「信じられんな。まだ疑いもはれていない女が一人で抜け出してきて、小便だぁ? どうせ逃げて来たに決まっ てる」 「そんな……あたし…嘘なんか言ってないのに……」  どんなに言っても相手はあたしの言う事を信じてくれない。たしかに一人でこんな森をさ迷っていたあたしが 怪しいって言うのは頭では理解できるけれど、あたしは本当に何もしていない、どちらかと言えば被害者なのだ。 だと言うのに、どうしてこうも疑われないといけないのか……そう考えると悔しさや悲しさが胸からこみ上げて きて、目尻に大粒の涙が溢れ出してきてしまう。 「だが、信じてやらん事も無いぞ。俺の目の前で小便して見せればな」 「えっ―――あっ、いやあっ!!」  一瞬、信じてもらえると喜んであげた顔はあたしに覆い被さるようにして襲いかかってきた寺田の顔を見て、 体を固くするのと同時に驚きの声を放ってしまう。  ごつごつと固い手はあたしを後ろの木へ叩きつけるように押しつけると、股間を覆っていた小さな手を払いの けて何も無いはずの股間へその太い指を差し込んでくる。 「やっ、だめ、触らないで、いやああああっ!!」 「ぐっふっふっ、そう暴れるな。ちょっと小便しやすいように手伝ってやるだけだ」 「そんなのいらない! だからあっち行って、いやっ、やめてぇ!!」  まだ自分でもほとんど触れたことのない場所に固い指先が這いまわる。太股をグリグリと割り開いて股間の真 上に指を当てると、消えたおチ○チンの代わりに現れた割れ目を遠慮無くなぞり上げ、そこまでも押し広げよう とするように左右にうねり内側の部分にしつこく触れてくる。  その行為に嫌悪感を覚えずにはいられなかった。同性――今はあたしは女の子になっているけれど、それでも 男に大事な場所を触りたくられているかと思うと背筋に悪寒に似た…いや、戦慄に近い冷たい震えが駆け巡り、 かろうじて目尻の端で踏みとどまっていた涙は悔しげなうめき声と共にぽろぽろと頬を伝い落ちていく。  けれど、指が往復するたびに触られている一点から全身に広がっていくおぞましさが一番刺激を与えているの は股間…そしてそのすぐ近くにある、今日一日分のおしっこを溜め込んだ膀胱だった。  あたしが身をよじって逃れようとするとそれだけでも体の奥で温かい液体の水面が揺れているような錯覚を覚 え、段々と激しくなる指の動きに合わせて丸みを帯びた丘のように盛り上がった股間の痺れは増していく。 「っ、くぅ…いやっ…いやあぁ……もう…許してぇ……」 「人がせっかく疑いを晴らしてやろうと言ってるんだ。素直に言う事を聞いておいた方がいいぞ」 「だ…だって……こんなの、絶対普通じゃ……いあっ…っあ……!」  そ…そこは……なに? なんなの…それ……ひっ!? や…そこは、いっ、だめ、そこは、いじっちゃ、ダメ ェェェ!!  股間をなぞる指先に力が加わったかと思った次の瞬間、臭い息を撒き散らす男の角張った指先は割れ目の中へ と入りこんでしまう。もしもそれだけならばまだ良かったのかもしれない……そのまま外よりも敏感な内部の壁 をなぞり上げた指先にある場所をなぞられると、目の前が白く光ったと思った直後にあたしの下半身はビクッと 今までにないほどおおきく跳ねあがり、そのままグリグリと押しこまれて腰が抜けそうな感覚が接点から内臓に 向けて突き抜けていく。 「あっ…ああっ……!!」  まるで意識が揺さぶられているようだ。俯いていた顔を跳ね上げたあたしはあれだけ嫌悪していた男の腕を自 分から握り締めると、焦点の定まらない視線を虚空にさ迷わせると全身を震わせてあられもない絶叫をほとばし らせてしまう。  これ…なんなの、これぇ! いや、わかんない、痛っ…ひきぃ!! やめ…お願いだからやめて、もう…もう そこを触らないでぇぇぇぇぇ!!  それが一体なんなのか、女の体の知識がほとんどないあたしに分かるはずがない。けれど乳首と同じように割 れ目の端にぴょこんと飛び出した肉の隆起は触れられるだけでも雷に打たれたような刺激が四肢の隅々にまで響 いてしまう。  平らなお腹が波打つように下腹が脈動するたびに熱を帯びた割れ目は寺田の指を左右から強烈に食い締めてし まう。割れ目の左右に盛り上がりは指を咥え込んでいびつに歪み、そして――  クチャクチャ、ズチュ、ジュプ、ジュプ…… 「くくくくく…股間が濡れてきたぞ。これがお前の小便か? ああ?」  まるで擦り上げる指との摩擦を和らげるかのように、あたしの割れ目の奥から温かい液体が溢れ出してくる。  きっと…それは梅さんの前に肌を晒した後、自分で割れ目に触れたときに指先にまとわりついた粘液なんだと、 なんとなく分かった…… 「あ…あた…し…おし、っこ、漏らし…て…なんか、あっ…やめっ…くうっ…!」 「随分と濡らしているじゃないか。ガキのマ○コかと思ったが、――分かるか? お前のマ○コが俺の指をイヤ らしく締めつけているのが」  しらない! あたしそんなのしらない! イヤらしい事なんかない…絶対にないのぉ!!  執拗に肉の小粒と割れ目の内側をこすり上げられたあたしは、イヤらしい言葉に必死に顔を横に振って否定す るけれど、密着させていたはずの太股は今にも崩れ落ちそうなほどにガクガクと震えて股間を這いまわる手をま ったく遮りはしない。そのせいか、潤滑液のような体液が滲み出しているはずの股間からの刺激はますます強く なり、内股にビリッビリッと痙攣が走るたびに足は突っ張り、その強張りが去った後には―― 「んんっ! ん…あっ、んくっ、んくっ、んっ…いっ…あっ、あっ………〜〜っ!!」  ―――チョロッ…チョロロッ……  とうとう堪えきれなくなったおしっこが触られている割れ目からほんの少しだけ迸った。それは男性器を通り ぬけるよりも何倍も強烈な刺激で、ググッとよじりあがる体内と勢いのよい小水とが摩擦するかのように、熱い おしっこが体外に放たれるたびに気に押さえ付けられる全身を伸びあがらせ、剥き出しの股間をより強く指に押 しつけるように突き出して切れ切れに泣き声を上げてしまう。 「ん? なんだ…もしかして本当に小便を漏らしたのか? ――ククク…本当にただの小便だったのか?」  漏らしてしまった事が寺田にばれてしまった……それでもあたしは必死に力を込めて、これだけは譲れないと ばかりに流れ出ようとしてくるおしっこを押し戻そうとする。  でも……それが寺田を欲情させてしまったのか、我慢しようとすればするほど奥から止めど無くあふれ出てく る温かい粘液でドロドロに濡れそぼった割れ目にさらに二本、計三本の極太の指が捻じ込まれ、グチャグチャと 濡れた割れ目を掻き回す音があたしの耳に届くぐらいに激しく股間のアソコをいじり立てられる。特にさっきお しっこが迸った穴が入念に刺激を与えられ、爪で軽く引っかかれるたびに股間から脳天に針を突き立てられたみ たいな鋭い刺激が突きぬけ、全身を仰け反らせたあたしの体は自分自信に女になったことを再確認させるかのよ うに服に押し込められたやわらかな乳房がおおきく波打って震えてしまう。 「ああああああっ!! やっ……あうぅ!! やめ…許して、お願い、お願いだからそこを触らないで、もう、 もう、漏れる、からぁ、ダッ…ダッ、ダメェ〜〜〜!!」 「漏らせ漏らせ。相当長い間我慢しているんだろう。見ているからこのキツキツのマ○コから小便をひねり出し てみろ。そうしたらこっちを犯してやるからな…グフフフ」  !? ――やっ…そこ…もう一つ…何か……穴…が………なに…そこに指を当てて…ひあっ!?  「それ」はおしっこの穴の少し下側に存在していた。 「ここに今すぐチ○ポを捻じ込んでやろうか?」  「そこ」に触れられた瞬間、あたしの神経の全てが痙攣し、まるで全身の支配権が奪われたかのように硬直して ……白い肌に震えが走りぬけた。 「ふっふっふっ…小便を漏らし、その恥辱で泣き叫びながら犯されたいか?」  さっきから熱い液体が溢れているのはその穴からだろう。小水とは違うねっとりとした液体をグチャグチャと かき混ぜながら、剣や斧を握り締める固い指はヒクヒクと収縮を弛緩を繰り返すその「穴」に垂直に突きつけられ る。  強烈な快感……そして恐怖。まるで股間に槍の穂先を突きつけられたような気分だ。 「そ…それ…やめて……こわい…いやっ、動か…ない…でぇ……」 「これをか? グフフフフ……これを動かすなというのか?」  グチュ…ズチャ…ズチュル…ズチュ…… 「いあっ!?」  指先が穴の周囲を円を描くように回転すると、あたしは溜まらず喉を反らせて短く鋭い悲鳴を上げる。  ………からだが…熱い……  刺激から逃れ様と必死に身をくねらせても指先はあたしの股間の割れ目から離れる事は無い。それどころか体 を動かす事でこすれ方が複雑になったのか、気に押しつけたお尻がわななくほど強烈にお腹の中で熱い感覚が弾 けていた。  何かがうねり、内側に向かって絞り上げられるみたいに蠢動し、白い肌から滲み出させた汗を弾け飛ばすよう に押さえ付ける野太い腕の下で身をうねらせる。  これ…いったいなんなの? わからない…これが女の体だっていうの!? こんな…こんなのが……!! 「あっ……あっ………!」  どれだけ下半身の筋肉を引き絞っていただろう、あたしの太股は恥ずかしくも漏らしてしまったおしっこと割 れ目の奥から迸った熱い液体とでヌルヌルに濡れていて、ビリビリとその表面を震わせている。  頭は何も考えられない。ただ男にされる事に抵抗を示すのはその指を食い閉める股間の割れ目だけだけれど、 その事が逆にあたしの神経を、意識を、発狂しそうなほどに圧迫し続け、何かが…何かがもうすぐ爆発してしま いそうな…気が…… 「いっ……!」  あたしの意識は真っ赤に染まっている。股間はヒクッヒクッと引っ切り無しに脈動し、それ以上に先ほどまで いじられていた肉の突起は痛いぐらいに痺れて、さめる事の内熱を帯びたままが行きに振れて狂おしいまでの快 感がそこから響いてくる。  けれどあたしの意識は最後までそれを受け入れる事ができずにいる。揉み解すように指が「穴」の周囲を押し揉 むけれど、波打つ下腹とは逆にそうされればそうされるほどあたしは唇を噛み締め、苦しげに顔を歪ませる。 「グッグッグッ…まだ拒むのか。だが…そろそろ入れてみるか?」  少しずつ小水を漏らしてはいても、まだその大半を必死に堪えているあたしに業を煮やした…というわけでは ない。まるであたしが震えを堪えるのを逆に喜んで見つめていた男は不意に顔を寄せて生臭い息を吐くと大きな 舌であたしの首筋をぞろりと舐め上げた。 「い…ヤァ……!」  その行為を顔を横に向けて拒絶するけれど、こんな醜男の生暖かい舌が唾液の跡をつけながら這いあがる感触 に全身に鳥肌が立ちそうな気分だ。  そんなあたしの様子にさえ寺田は不気味な笑みを浮かべる。それを見てますます顔を背けてしまうが……「穴」 の上の指がグイッとあたしの――中に……  ―――ミジッ… 「あっ…ああっ!? やっ…なっ…痛い…痛いっ!!」  これ……あたしに中に…入ってきてるの!? 「やっ…やめてぇぇぇぇぇ!!!」  それはまったくの未知の感覚だった。  今まであたしのおチ○チンが会った場所から自分の体内に別の人の指が入りこんでくる……ゆっくり、ゆっく りとだけれど角張った指が侵入してくるたびに何かにヒビが入るような、何かが裂けるような異音が体の中に響 いてくる。 「いやっ、もうやめて、抜いて、指を抜いてぇぇぇ!!」 「なんだ、もしかして処女なのか? クッ…これはとんだ」  あたしが眉をしかめて苦痛に顔を歪めると寺田はさらに嬉しそうに唇を吊り上げ、指を抜くどころか捻りを加 えてさらにひと押し、あたしの中心へとつながっていそうな露だらけの肉の道を広げるように掻き回した。 「っあ…うああぁぁぁああああああっ!!!」  も…もう………もう、だめ、そん、なとこ……ひぁ……ぁっ…そこにふれたら…押さないで……おし…っこ… …もうダメ…ダメェェェぇェェェェ!!!  股間から鈍痛が捻じ込まれ、あたしは寺田の腕に爪を立てながら身をのけ反らし、声にならない叫びを上げる。 しかしそんな事で屈強な戦士がひるむはずも無く、有無を言わさず股間の奥に入ってきた指は体の内側から小水 が通りぬける尿管を圧迫し、揉み解し、既にギリギリのところまで下り落ちてきていたモノを押し出そうとする。 「あッ、イッ…ひあっ!!」  ―――チョロ………ジョロロ……  もう…あたしは………っ!!  神経が剥き出しになったかのような内壁を容赦無く擦りたてられ、あたしの脳裏はまばゆいばかりの火花の輝 きに覆い尽くされる。股間の痛みは慣れるどころか増す一方……涙の溢れる瞳を瞼で多い、何も見ずにただ耐え 忍んでいたあたしの体は一向に収まる事の内ジンジンとあたしを悩ませる疼きと鈍痛に耐えきれなくなり、なに か…なにかとんでもないものを解き放とうとして――  いやああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!  ジョロ……ジョロロロロロロロロロロロロロ………  ついに…あれだけ我慢していたのに、いじられつづけた股間の割れ目から盛大な音を立てて温かいおしっこが 迸り始めてしまった。 「こりゃいい。最高だな、お前は。男にマ○コをいじられて小便を濡らすなんて、とんだ淫乱な処女がいたもん だ。あの爺さんが入れこむわけだ、ガッハッハッハッハッ!!」 「ひぃ……んッ…んんんっ〜〜〜〜〜〜〜!!」  放尿が始まったのとほとんど同時に寺田の指はあたしの割れ目から引きぬかれ、あの悩ましい快感から開放さ れはしたけれど、下腹が張り詰めるほどに溜めこまれていたおしっこは一度突いた勢いを押しとどめる事は出来 ず、あたしは気にもたれかかって立ったまま、人が見ている前で湯気が立ち上るほど熱い小水を延々と、延々と 放ちつづけてしまう。  ………出来る事なら今すぐにでも逃げ出すか、この場から消え去ってしまいたい……こんな…恥ずかしい思い をするのなら……  おしっこは人が見ている前だというのに恥ずかしげも無く僅かな弧を描いて下に向かって飛んでいく。いつも なら十秒と少しで終わるはずのところが今日に限って三十秒……そして一分と、細い肉の通路を押し広げて迸る 排泄行為を繰り返す。 「やっ……とまっ…とまって……もう…もういいから…とまって…ひんっ……とまって…よぉ………」  涙をぽろぽろと流して懇願する……そんな事をしなくてもいつかは止まるものなんだけれど、百を数えそうな 時間の間にあたしの意識は見られながら排尿した事への恥ずかしさと股間をいじられて感じた感覚への困惑から ガラガラと崩れ去り、雫となった黄色い温水を滴らせる股間を隠す事も出来ないまま、ズルズルとその場に座り 込んでしまった。 「うっ…ヒック……ヒック…なんで…あたしばっか…こんな目に…ヒック…ヒック……」 「まぁ、運が悪かったと思って諦めるんだな。梅の爺さんには手を出されなかったみたいだが、処女失うのなん て早いか遅いかの違いだしな」  寺田はこんな目に会わせてくれた張本人なのに図々しくそういうと、泣きじゃくるあたしの肩に手を置き…… そのまま押し倒しながら覆い被さってきた。  まだ…まだ何かするの!?  その一瞬だけは抵抗しようとするけれど、恥ずかしさに全身の力を奪われていたあたしは為す術も無く夜露に 濡れた草の上へと押し倒されてしまった。


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